2011年2月15日火曜日

はばたく想像力、作家の限界はどこにある

 

「原稿零枚日記」
小川 洋子

単行本: 240ページ
出版社: 集英社
言語 日本語
ISBN-10: 4087713601
ISBN-13: 978-4087713602
発売日: 2010/8/5

いやあ、小川さんの想像力にはあらためて恐れ入ります。
『日記』というタイトル、そして、表題もなく、

「9月のある日(金)
 長編小説の取材のため・・・」

と始まる物語で、読者はついつい、ちょっとしたエッセイかな、と思い込み、物語の中に入り込んで行くことになる。
 そこにあるのは、
 苔料理専門店で供される苔料理の数々。
 子供時代の間取りを思い出すとともに部屋中に広がる方眼紙。
 運動会あらしでもらった賞品の学習ノートに書かれる物語。
 そして編集者や母とのかかわりと、孤独な小説家の内面に巣食う暗い情念。

 ひきこもりの作家かと思えば行動的。健康スパランドに出向くかと思えば、飛行機と新幹線を乗り継ぎ、屋外美術展で冒険を繰り広げる。

 繰り返すが、この想像力はどうだろう。
 デビュー当時から一目置いてはいたが、こうして短編集の形態をとる連作長編を読むと、小川さんの頭の中をのぞいて見たくなる。
 

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