2013年12月7日土曜日

晩夏光、まだ8月の香港で

「晩夏光」
池田 久輝


単行本: 260ページ
出版社: 角川春樹事務所
ISBN-10: 4758412235
ISBN-13: 978-4758412230
発売日: 2013/10/08


2012年、夏、香港。この地には、観光客を標的にした【スリ】、その盗品を売りさばく【露店】、回収した盗品を持ち主に返し謝礼を得る【回収】とそれぞれグループが存在し、三者共存の掟があった。ある日、回収側の人間である劉巨明が、何者かによって殺害された。仲間であった新田悟は、それを回収側のトップである陳小生から聞かされ、巨明の妻、麗文の元を訪ねるように指示される。そこで新田は、彼女からあるメモを渡される。メモには殺害された巨明の文字で「任家英に気を付けろ」と書かれていたのだ。果たして、巨明を殺害した犯人とは? 〝任家英〟とは何者なのか? 香港に渦巻く深い闇に、新田は巻き込まれていく――。北方謙三、今野敏、角川春樹、全選考員満場一致で受賞。あのハードボイルドの重鎮たちをも唸らせた!! 香港を舞台にしたハードボイルド群像劇。


 結局、悪口になってしまいそう。
 ハードボイルドの重鎮たちを唸らせたというのは、
 じつはあまりのあっけなさに嘆いて、唸ったんじゃないの?


 傷心をかかえた新田悟は、香港の裏社会で、日本人観光客とのつながりを通して、日本とのつながりをかろうじて持ち続けている。
 
 ある日、殺人事件が起こる。
 劉巨明(ラウ・ゴイミン)、回収側の使い走りだ。彼が殺される。その葬儀のだんどりをつけようと、巨明の家へおもむくが、巨明の妻・麗文(ライマン)のそぶりがおかしい。部屋の中に誰かいるのか?


 新田たちのグループの長である陳小生(チャン・シウサン)がひそかに動き回っている。何者かが新田たちのグループをかき回しているようだ。


 葬儀屋、許志論(ホイ・ヂーロン)はまだ若い男だが、不気味さをもったやっかいな存在だ。かれらの裏社会に通じている、その如才なさが、逆に安心感を与えてもいる。
 1年半前、新田が香港に着いたばかりの頃に、新田と許は初めて出会っている。
 そのとき、張富君(チュン・フーワン)の一人娘、玲玲(レンレン)が自殺する騒ぎがあった。まだ15歳の若さで、アパートの屋上から飛び降りたのだ。母親の楚如(チョー・ユイ)のなげきはいかばかりだったか。
 


 死んだ巨明が隠し持っていた手紙には、新田に謝罪する文章が書かれていた。また、陳を裏切ったとも。
 そして任家英(ヤム・ガーイン)に気をつけろ、と言い残していた。


 羅朝森(ロー・チウサム)、陳に頭のあがらない、香港警察の悪徳刑事だ。管轄は違うが、捜査に協力しているという。新田と羅が乗ったトヨタに、何者かが襲撃を仕掛けて来る。
 
 そんな男たちが、香港の街を駆け抜けていく。
 ヴィクトリア・ハーバーは維多利亞彎であり、タクシーは的士、そんな書き方が異国ムードをかき立てるかと言うと、そうでもない。


 人物名からしてそうだ。
 製本の構成では、きっちりと、見開きページの最初に出て来たところにルビを振ってくれている。だが、左のページに移ってしまうと、思わず、右面からルビをさがしてしまう。
 そこで、読み進めるのが遅れて来る。


 事件が起こって、そこから進展しそうなのだが、はがゆいほど堂々めぐりばかり。
 結局、チンピラたちが右往左往しているだけの印象しか残らない。
 すべての動機のもとにしても、やっぱり、という程度。
 最大の悪者・任家英の正体も明らかにならず、これは続編狙いなのか?
 日本のハードボイルドがこれだと思われても困る。
 

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