2011年6月28日火曜日

謎の新種生物と、新薬創出との関わりは


「ジェノサイド」
高野和明
単行本: 590ページ
出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング)
ISBN-10: 4048741837
ISBN-13: 978-4048741835
発売日: 2011/3/30
  
 始まりはアメリカ、ホワイトハウス。大統領の下に人類絶滅の危機だというレポートが届く。アフリカで新種生物が発見されたというのだ。それはすでに30年前から危惧されていたことだという。
 かたや、傭兵生活で病気の息子の治療費を稼ぐイエーガーには、コンゴでの極秘任務が与えられる。息子の難病治療にかかる費用を思えば願ってもないことと、その任務に飛び込むことに。
 そして日本。こちらは大学院で薬学を専攻する古賀研人(けんと)を中心に物語が展開する。急死した父の葬儀が済んで間もなく、当の父から、生前に準備していたらしきメールが届く。新薬の研究を続けるように、というのだ。その準備はすでに整えられていた。そして協力者らしき人物も。
  
 さて、ジェノサイド、民族抹殺というわけだが、これには何種類か描かれる。
 アフガン、イラクのテロ組織による無差別攻撃。これは米軍による、アフガン、イラクへの攻撃への報復だと位置づけされる。
 あるいはアフリカの奥地で、民兵組織による地元民の虐殺。
 米大統領はその新種生物の抹殺を命じる。そう、新種生物とは新人類なのだ。
 
 コンゴの奥地で新人類の子供と出会ったイエーガーは仲間たちとともに、その新人類を救出するべく活動を始める。大統領にそむくことになるのだが、その代償は、新人類が作り出してくれる難病治療薬だ。
 治療薬は日本で、研人と協力者の韓国人留学生が、謎の創薬ソフトを使って試験を重ねている。テストの合間を縫って、研人は父の研究のあとを辿り、父が一時期コンゴで研究していたことを知る。しかし、米軍の追求が日本の警察の手を通じて研究を阻もうとする。
 
 新人類は現人類によって抹殺されていくというのが、昔からSFのストーリーに多い。名作も数多ある。いわばお決まりのストーリーだった。今回も大統領の命令により、新人類は抹殺される運命にあるのだが。
 イエーガーと仲間たちによる出アフリカの決死行はすさまじい迫力。
  
 現在の世界は、知能が高い人間がたったひとりで操作出来うる世界になっているようだ。たしかに世界に張り巡らされたネットの網が操作できれば、金融、軍事面での壁などないも同然。
 ただ、新人類は現人類に戦いを挑むわけではない。その遠大な計画には目を見張らせるものがある。
 進化した人間がかいま見せる世界に乾杯。
 

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