2012年7月15日日曜日

幽女の如き怨むものは果たして何処にひそむのか

「幽女の如き怨むもの」
三津田 信三

単行本: 566ページ
出版社: 原書房
言語 日本語
ISBN-10: 4562047968
ISBN-13: 978-4562047963
発売日: 2012/4/17


戦前、戦中、戦後にわたる三軒の遊郭で起きた三人の花魁が絡む不可解な連続身投げ事件。
誰もいないはずの階段から聞こえる足音、窓から逆さまに部屋をのぞき込むなにか……。
大人気の刀城言耶シリーズ最新書き下ろし長編!

第一部 花魁-初代緋桜の日記
 桃苑遊郭の「金瓶梅楼」。
 うちが、ここに来てからもう3年になる。うちは、お父の借金のかたに田舎から売られてきた。それでも、まもなく花魁になれる。これまで、本家のお嬢様や、坊ちゃんのお世話をしながら花魁になれる日を待っていたが、ようやくその時がきたのだ。
 だが、花魁になって、その厳しい毎日が、うちの思い描いていた日々とは全く違うことにようやく気付いた。
 そして、この金瓶梅楼にはなにか恐ろしい秘密がある。

 別館との渡り廊下を、誰も知らない、なにかが歩いて行く。裏にある「鬼小屋」は何をするところなのか。 ある日、通小町という花魁が自殺する。田舎の恋人に捨てられたのを怨みながら。
 それに続いて、うちも何かに魅かれるようにその部屋から飛び出そうとしたが、危ないところを同僚の花魁に助けてもらい、命拾いすることができた。
 だが、鬼子をみごもった花魁が離れの小屋で赤子を始末した直後、3階の部屋から飛び降りてしまう。
 何かが、幽女が、遊女たちを殺そうとしているのだ。
 うちはここから逃げ出すことができるだろうか・・・
 
第二部 女将-半藤優子の語り
 「梅遊記楼」これが今の店の名前です。
 母から遊郭を受け継いだ私のもとに、桜子という女が、苦境にある実家の商売を助けるためにやってきました。彼女を2代目の緋桜として売り出すことにしましたのは、彼女の雰囲気が、何年か前に緋桜として売れっ子だった花魁に似たものがあったからです。
 でも、それが引き金になったのか、恐ろしい事件が起こり始めました。
 お産のために預かっていた親戚の若奥様が、赤ん坊を出産した直後、気が触れたようになって3階の部屋から飛び降りて死んでしまったのです。
 つづいて、2代目の緋桜こと桜子さんも、同じように飛び降りようとするところを必死につかまえて、これは助けることができました。
 でも、その後、まもなくもうひとりの花魁が飛び降り自殺をしてしまうのです。
 古くからいる遣り手婆は、この店にいる幽女の仕業だと恐れおののいておりました。
 ただ、戦争が厳しくなって来たこともあり、店を閉めることにしました。そのときには花魁たちの借金はすべて棒引きにして、みんなが新しい生活を始められるよう、心から応援したのです。

 空襲で焼けた離れから、誰とも知れぬ焼死体が発見されたと聞いたのは、戦争も押し詰まった終戦間近のことでした・・・

第三部 作家-佐古荘介の原稿
 「梅園楼」には幽霊がいるらしい。
 僕はそんな話をきいて、伯母の店に興味を持った。梅園楼は戦前は「金瓶梅楼」、戦時中は「梅遊記楼」と言われていたのだ。
 そして終戦。アメリカ軍による占領。だが、終戦直後の8月26には、もう特殊慰安施設協会という、娼妓に関する法律が出来ていた。
 梅園楼はカフェーと呼ばれる特殊飲食店として、女給とお客との橋渡しが出来る店になっている。そこに、3代目の緋桜さんがいるらしいのだ。
 そして、自殺騒ぎが起こる。さきの金瓶梅楼、梅遊記楼とも関わりのあった男が、3階の部屋から身投げして死亡する。
 またもや、3人の自殺者が出るのだろうか。ふたりめは果たして3代目の緋桜さんだった。彼女は、同僚の女の子に救われたのだが。
 (そして3人目は・・・)

第四部 探偵
刀城言耶の解釈
 刀城は半藤優子のもとで、事件の解釈を試みる。
 亡くなった遊女たち。救われた遊女たち。そして名前こそ変わっていたが、一軒の遊郭にまつわる歴史と、関わった人々の行く末。
 そこで、刀城は、重大な結論を導く。

 
刀城言耶、今回は直接の冒険談はないが、民俗学研究家としての面目躍如。戦前から戦後にかけての、ある地方の遊郭で起こった3人ずつ9件の自殺事件と自殺未遂。そこに現れる謎の幽女。緋桜という名前の花魁に関わる謎とは・・・

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