2013年3月18日月曜日

ゴリアテ、やて


「ゴリアテ」―ロリスと電磁兵器―
スコット・ウエスターフェルド(著)
小林 美幸(訳)

単行本: 494ページ
出版社: 早川書房
言語 日本語
ISBN-10: 4153350079
ISBN-13: 978-4153350076
発売日: 2012/12/7

人造獣と機械が空を舞う第一次大戦。東京へ向かう飛行獣リヴァイアサンは、ロシアのツングースカで驚異の光景を見る。公子アレックの戦争終結の願いは叶うのか? 世界で絶賛される三部作完結篇
オスマン帝国のイスタンブールで、ドイツの野望を打ち砕いた公子アレックと男装の士官候補生デリン。英国海軍の飛行獣リヴァイアサンで東京へ向かっていた彼らは、ロシアのツングースカで驚異の光景を目にする。その状況を引き起こしたという天才科学者ニコラ・テスラは、戦争終結の可能性がある電磁兵器、ゴリアテをニューヨークに建設しているという。なんとしても戦争を終結させたいアレックは、ゴリアテの真価を判断すべくテスラに接近するが……。はたしてアレックの願いはかなうのか。そしてデリンの、アレックへの密かな想いの行方は? スチームパンク冒険譚三部作、完結篇

 さて、イスタンブールをあとにして、飛行獣リヴァイアサンはロシアを横断していく。
 デリンとアレックの恋物語の要素を秘めて、波乱の地へ飛び続ける。
 
 ロシアのツングースカで恐るべき破壊力を目の当たりにしたアレックたち一行は、その原因をつくったという発明家ニコラ・テスラを拾って日本に向かう。
 日本もいまやダーウィニストとクランカーが共存する国家と化している。ただ、日本独自の進化獣である<カッパ>の造形はいただけないが。

 ロシアを横断中にアレックはデリンが女性だということに気付く。そしてそれは、彼女が自分を欺いていた、彼女に裏切られたという思いにつながっていく。ましてや、自分はオーストリアを率いる身分であり、彼女は平民だ。平民あがりの自分の母がどんなに苦労してきたかは知り尽くしている。デリンをそんな目に合わしたくはない。
 デリンはデリンで、自分の思いを明かすわけにはいかない。

 ニコラ・テスラは自分が開発した「ゴリアテ」は平和を作り出す兵器になると言い、帝国劇場で大々的に発表する。
 そしてアメリカへ。サンフランシスコで新聞王ハーストやピュリッツアーと出会う。ハーストが経営する映画会社は冒険活劇映画を撮影している。そしてメキシコでは革命家パンチョ・ヴィラの活躍をニュース映画として撮影していた。
 
 だが、アメリカ人記者エディ・マローンは、デリンが女性だということに気付く。それが公表されると、アレックとデリンばかりでなく、イギリスやオーストリアを巻き込んだスキャンダルになってしまう。
 アレックは非常手段に訴えることにして、自分とデリンを救うことに成功。
 そしてニューヨークへ。ロングアイランドのテスラの研究施設にゴリアテのタワーが建てられている。
 デリンはドイツ軍が海底ウォーカーを使って攻めてくるのをリヴァイアサンの上から目撃する。
 そしてアレックはテスラがベルリンを滅亡させようと仕組んでいることに気付く。それを防ぐには・・・
 

 ふたりの冒険が大戦を防ぐまでには至らなかったが、それぞれの思いが交差しながらも、やがて落ち着くべきところに収斂していく。
 才知ロリスと呼ばれる人口獣が、察知ロリスかと思われるほどの進化を遂げ、あたかも未来の情報端末のようなものになって来ている。
 あるいは、あり得たかも知れない過去を生きて行く恋人たち。
 かれらが行き着いた未来はどうなっているだろう。
 残念ながら、今のところ、その未来は描かれていないそうだ。
 読者はここで飛行獣から降りて現実の世界に戻ることになる。
  

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