2013年3月15日金曜日

バーニング・ワイヤーはライムを焼き尽くすのか

「バーニング・ワイヤー」
ジェフリー ディーヴァー
池田 真紀子 (翻訳)
単行本: 477ページ
出版社: 文藝春秋 (2012/10/11)
言語 日本語
ISBN-10: 4163817107
ISBN-13: 978-4163817101
発売日: 2012/10/11


突然の閃光と業火―それが路線バスを襲った。送電システムの異常により、電力が一つの変電所に集中、爆発的な放電が発生したのだ。死者一名。これは事故ではなかった。電力網をあやつる犯人は、ニューヨーク市への送電を予告なしに50%削減することを要求する。だがそれはNYに大停電を引き起こし、損害は膨大なものとなると予想された。FBIと国土安全保障省の要請を受け、科学捜査の天才リンカーン・ライムと仲間たちが捜査に乗り出した。しかし敵は電気を駆使して罠をしかけ、容易に尻尾をつかませず、第二の殺戮の時刻が容赦なく迫る。一方でライムはもう一つの大事件を抱えていた―宿敵たる天才犯罪者ウォッチメイカーがメキシコで目撃された。カリフォルニア捜査局のキャサリン・ダンスとともに、ライムはメキシコ捜査局をサポートし、ウォッチメイカー逮捕作戦を進めていたのだ。ニューヨークを人質にとる犯人を頭脳を駆使して追うリンカーン・ライム。だが彼は絶体絶命の危機が迫っていることを知らない―。

担当編集者から一言
ベストセラー作家ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズ最新作の登場です。今回の敵は「電気」。この目に見えぬ凶器を巧みに操って殺戮を繰り返す犯罪者がニューヨークを恐怖の淵に叩きこむ。惨劇への秒読みが進むなか、ライムは微細な証拠から犯人を割り出そうと苦闘する。だが同時に彼は、メキシコで進行中の天才犯罪者ウォッチメイカー逮捕作戦の支援もしなくてはならない。今もっとも面白いミステリを書く作家ディーヴァーの面目躍如。今回も衝撃的なドンデン返しが待ち受けています。(NS)


 四股麻痺で首から下が動かせない、天才科学捜査官。おなじみのリンカーン・ライムシリーズ。
 今回の敵は電気―といわれてしまうと、そうか、と思ってしまうが、実は裏がある。

 電気を停めろ。停めなければ被害者が出る、という脅迫。
 犯人はその証拠に路線バスに電気の火花を送る。垂れ下がった送電線に数万ボルトの電気を流し、路線バスを襲う。たまたま乗り場にいたプエルトリコ人の男性が被害にあう。電気ショックばかりでなく、そばの金属ポールがやけただれて爆発、そのかけらが男の体に突き刺さったのだ。溶けた金属で傷口がふさがれ出血がほとんどないまま苦しみぬいて男は死ぬ。

 そしてふたたび脅迫状が。
 こんどは送電量をカットせよ、というのだ。
 だが、送電量を減らせば、今のニューヨークでは逆に被害が他におよび、あまたの死者が出る。
 と説明するのは電力会社の女性CEO。
 彼女の解説によって読者は電気の怖さ、必要性が理解できる。

 微細証拠物件を収集し、分析した結果、犯人の姿が浮かび上がる。
 犯人は同じ電力会社の、トラブルマンと呼ばれる技師のレイだった。自身が白血病になったのは電気のせいだ、と電力会社に恨みを抱いているというブログの手記が見つかる。だがレイは姿をくらまし、次の犠牲者を求めて暗躍する。

 かたや、サンフランシスコのキャサリン・ダンスはリンカーンの宿敵ウォッチ・メイカーがメキシコに姿を現したという情報を伝えてきており、リンカーンはこれにも対処せねばならない。

 ニューヨークではアメリア・サックスの活躍はもとより、警察とのつなぎ役であるロンをはじめ、潜入捜査官のフレッドが華々しい活躍を見せ、オールキャストの立体的な捜査が描かれていく。

 ホテルを襲った犯人は客たちを閉じ込め数人の被害者が出る。そのさまを目の当たりにしたアメリアはその悲惨さと恐怖に凍りつく。だが、犯人が次の標的に選んだのはアメリア本人だった。
 若き相棒とともにアメリアは、レイらしき男が女性を人質に取っている倉庫に乗り込む。だが、それは犯人の罠だったのだ。

 今回、犯人像があまり具体的に現れてこない。それは作品自体の仕掛けでもあるのだが、いつものどんでん返しで次の章につながっていく流れが、もひとつしっくりこない。
 それは爺だけの読み方かもしれない。書評ではみなさま満足しておられるようだ。
 犯人は女性CEOこそ首謀者だと暗示をかける。再生可能エネルギー推進派が電力会社に対して嫌がらせをしているのだとして、みずから犠牲者になっているという。
 
 だが、犯人の真の狙いは他にあった。当然リンカーンはそれを防ぐのだが・・・
 事件が落ち着いたあと、最後の事件が描かれる。それは、今後の展開にどう影響を及ぼすのか。

 

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