2010年2月16日火曜日

「元気でいてよ、R2-D2。」


「元気でいてよ、R2-D2。」

北村 薫
単行本: 192ページ
出版社: 集英社
発売日: 2009/8/30
 普段は見えない人の真意がふと現れる瞬間を描く、全8編収録の短編集。と、「BOOK」データベースにある。

 各編の主人公がほぼ女性であり、女性の心の動きを書かせたら、この人にかなう男の作家はいないという北村薫さんの短編集。安心して読める。

 まさか夫が浮気? そんなことはないと思いつつ、ふと、マスカットの触感と夫のひとことが不安な気持ちをもたらす瞬間。
 「まえがき」に触れられた、「妊娠中の方は読まないで」、と警告された恐怖? 譚。
 お転婆少女だったころ忍者ごっこで遊んでいたけれど、そのときから本当の自分は実は・・・。
 くしゃみ3回は惚れられた証拠と豪語する男性社員から、好かれたり、振られたり、と社内のうわさが飛び交っていたのだけれど・・・。
 少女のころ文芸新人賞に入選した実績から図書館の催しものの役員に選ばれたが、子供の授業参観にも行かねばならなくなり・・・。
 コーヒーメーカーの形がスターウォーズのR2-D2みたいだ、とはしゃぎながら、一人称で語られる、アパートの窓際にあった、目障りな木の話。
 姉の旦那に連れられて美術館へ出向いた妹が、その夜、姉から気になる言葉をぶつけられ・・・。
 昔のことを語り続ける60歳の語り部が、ギリシャ神話のざくろの話を思い出しながら、陥った罠。

 日常の一瞬に起こる心の揺れがふと思い出させる、不安、恐怖、失望が語られる。
 だが、どうだろう、そこから立ち直ることが出来る女性の強さを、北村さんはしっかり認めているのではないだろうか。女性が主人公の作品が多い著者の、バラエティに富んだ一面をかいま見せる作品群。
 あらためて、直木賞おめでとうございます。

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