2010年5月12日水曜日

「想い雲―みをつくし料理帖」

「想い雲―みをつくし料理帖」 (時代小説文庫)
高田 郁

文庫: 281ページ
出版社: 角川春樹事務所
ISBN-10: 4758434646
ISBN-13: 978-4758434645
発売日: 2010/03/18

鮎飯からは じまり、泥鰌、ジュンサイなど、季節の食物をとりまぜ、主人公の「澪」が考えだした「う尽くし」まで、水無月の風がわたる江戸の下町で、行方不明になって いる若旦那のてがかりが分かりそうになる展開の第一話。
八朔の町の賑わいに合わせて、江戸ではなじみのない鱧の料理を中心に話題がつづられ、吉原の用心棒が料理の助っ人にあらわれたことから、おさななじみの女友達とのたまゆらの交流につながる第2話。たまゆらって玉響と書くのだね。
同じ屋号の商売仇にめぐりあったことで、「三方よし」 の3のつく日に店でお酒を供するようになった澪の苦労話。澪がほのかにあこがれを抱く小松原があれこれと手をかしてくれる。8月の名月もすぎ長月のひと月を通じて店が活気を取り戻すまでの第3話。
第4話では前巻の末尾で澪たちの店に引き取られた幼い姉妹の事件を中心に、秋の深まりとともに物語も奥行きを深めてい く。そこにアクセントを置くのが柿のひと枝。
展開があざやかでテンポも早い。きわめて画像的な場面も多く、ドラマ、漫画への移植もまもなくか、と思えるような一巻。

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