2010年5月16日日曜日

「グラーグ57」

「グラーグ57」<上・下>
トム・ロブ・スミス

文庫: 382ページ、356ページ
出版社: 新潮社
ISBN-10: 4102169334
発売日: 2009/8/28

2010年度の『文春』4位、『このミス』6位。
昨年の1位だった 「チャィルド44」から3年後の1956年という設定。
グラーグとは本文でこう説明される。グラーヴノエ・ウプラヴレーニエ・ラーゲリ(強制労 働収容所、縮めてグラーグ)。ナホトカに近い?オホーツク海のそば?にある第57強制労働収容所のこと。では誰が収容されているのかというと、反逆罪に問われた人々。
だが、主人公のレオはいう。「国家が間違っていた、命令がまちがっていた」
前作の数年前に起こった事件から因果はめぐ る。彼は国家保安省の捜査官として反逆者を逮捕、投獄してきた。しかし、そのためには罠を用い、上司の命ずるままに「人民の敵」を投獄してきたのだ。それが誤りだったと発言したときから全てが敵に回る。同僚、上司、国でさえ自分を守ってはくれない。そして最大の敵はかつて自分が投獄した反逆者と呼ばれる人々。

その復讐の標的とされたのは自分と、妻、そして養女。養女を誘拐され、妻を人質にとられたレオは、グラーグ57に収容されている元司教を脱出させるべく、自身を犯罪者に偽装し囚人護送船で嵐のオホーツク海を渡る。囚人たちの反乱、あやうく沈没の危機に見舞われる護送船。ようやく辿り着いた、長い冬がまだまだ終わらないシベリアの果てで巡り会った元司教は自分を陥れた捜査官のことを決して忘れることはなかった。収容されている罪人たちが受けた拷問をすべてお前に科してやる。

だが、フルシチョフによるスターリン批判が公になると、その時点で立場が逆転した。収容所で反乱が起こり、囚人たちによる裁判がおこなわれる。所長は自己弁護する。「仕方のないことだった」。
レオは収容所の混乱のさなか、飛行機を奪って脱出する。そしてモスクワへの帰還。だが、妻や養女は使命にもとづきハンガリーへ赴いていた。

動乱のブダペストでの再会。テロリストとして活躍し始めた養女はソビエト支配からの脱 却のシンボルとしてニュースをにぎわせる。そこにソビエトの鎮圧軍がせまる・・・。

前作は悲惨な物語で、その続編ということで抵抗もあったが、今回もスピーディな展開は健在。なにより登場人物すべてに見せ場が用意されており、オールスターキャストによるノンストップアクションといったおもむき。次回作もあるそうで、乞うご期待。

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