2011年11月26日土曜日

59年前の呪いが現代によみがえる


「よろずのことに気をつけよ」
川瀬 七緒

単行本: 356ページ
出版社: 講談社
言語 日本語
ISBN-10: 4062171430
ISBN-13: 978-4062171434
発売日: 2011/8/9

第57回江戸川乱歩賞受賞作       
呪いで人が殺せるか。変死体のそばで見つかった「呪術符」を手がかりに、呪術の研究を専門にする文化人類学者・仲澤大輔が殺人事件の真相に迫る、長編ミステリー

 ということで、今回の乱歩賞は10何年ぶりかで女性が受賞、しかも女性のダブル受賞で話題に。ただ、選評をみているとかなり厳しい評価もうかがえる。
 この作品もぎこちないところはあるが、謎が謎を呼び、ラストのアクションシーンまで楽しませてくれる。

 主人公の仲澤は文化人類学者というが、民俗学に近いような研究内容だ、呪術などと。
 父とはある事情で生き別れとなり、祖父とふたりで暮らしている女子大生の真由が仲澤のもとを訪れたのは、祖父が死んだ一月後のこと。住んでいた家の床下から見つかった謎の紙片の鑑定依頼に来たのだ。ビニール袋に密閉された状態で発見されたそれは、何か呪符のようにも見え、怪しげなオーラをはなっている。
 なにより、祖父は得たいの知れない凶器でめった刺しにされ、肉をえぐられるという猟奇的な死を遂げている。その動機と、呪符とはなにか関わりがあるのだろうか。

 呪符の文言の最後にこうあった。
 「師走の月に雪なくば、よろずのことに気をつけよ」
 タイトルはここから出ている。
 そして呪符になすりつけられていた鶴の血液。

 真由の祖父はボランティアとして小児病棟の子供たちを見舞っていた。
 4歳の少女は祖父から呪符の文言を教えられていて、そらんじることもできた。少女の口からひとりごとのように流れることばに、ふたりは驚愕する。
「しわすのつきにゆきなくばよろずのことにきをつけよ」

 仲澤は過去に小児虐待の事実を把握しながら、その当事者の少年を救えなかったという負い目を持ち、子供たちには弱い部分があったのだ。
 やがて、祖父の知人だというホームレスの民俗学者・野呂から、鶴にまつわる秘儀を伝える謎の呪術師集団が四国の山奥にいるという情報をつかみ、ふたりは高知に飛ぶ。
 そこから山形に移動、野呂が、鶴を使った呪術に関する文献を見たという旧家を訪ねるが、すでに焼失してしまっていた。
 東京に帰ったふたりは、八王子で殺された老婆が祖父とつながりがあるらしいということを野呂から聞き、祖父が残したアルバムに写る山こそが因縁のもとだと理解する。休む間もなくクルマをとばして向かったのは、福島県白河。
 そこでおこる大冒険。
 59年前の因縁が引き起こす惨劇。老人が老人を狙う、その真実とは?
 

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