2013年2月20日水曜日

謎解きはディナーのあとで、推理は読みながら

「謎解きはディナーのあとで 」3
東川 篤哉

単行本: 269ページ
出版社: 小学館
言語 日本語
ISBN-10: 4093863474
ISBN-13: 978-4093863476
発売日: 2012/12/12


シリーズ累計300万部突破の人気ミステリ
国立署の新米刑事、宝生麗子は世界的に有名な『宝生グループ』のお嬢様。
『風祭モータース』の御曹司である風祭警部の下で、数々の事件に奮闘中だ。
大豪邸に帰ると、地味なパンツスーツからドレスに着替えてディナーを楽しむ麗子だが、難解な事件にぶちあたるたびに、その一部始終を話す相手は”執事兼運転手”の影山。
「お嬢様の目は節穴でございますか?」
――暴言すれすれの毒舌で麗子の推理力のなさを指摘しつつも、影山は鮮やかに謎を解き明かしていく。
2011年本屋大賞第1位、同年の年間ベストセラー第1位に輝いたシリーズ累計300万部突破の大人気ミステリ第3弾。
文芸誌『きらら』に連載した5編「犯人に毒を与えないでください」「この川で溺れないでください」「怪盗からの挑戦状でございます」「殺人には自転車をご利用ください」「彼女は何を奪われたのでございますか」に、書き下ろし「さよならはディナーのあとで」を加えた全6編。
【編集担当からのおすすめ情報】
敏腕探偵である執事の影山に頼り切りだった麗子が成長を遂げ、活躍するエピソードにご期待ください。そして、最終話では麗子と影山、風祭の3人の関係にも変化が訪れて…!?

「犯人に毒を与えないでください」
 青酸カリ中毒で亡くなったと思われる、老人の遺体。ベッドのそばの机には、飲みかけの水が入った湯のみ。ラベルがはがされたペットボトル。中身は普通の水らしい。乱れたタオルがそばに落ちている。部屋の捜査をした風祭警部は、薬をいれていたピルケースを見つけてご満悦だ。麗子は部屋の隅で、ちぎれた輪ゴムを見つけた。家族の話では、ペットの白猫が最近、行方不明になっており、老人は気落ちしていたのだという。そのショックで自殺したのだろうか。
 執事の影山は「ペットボトルと猫の共通点はなんですか?」と言い出す。そして、麗子には「お嬢様には、まったく進歩が見られません」とも。

「この川で溺れないでください」
 多摩川のほとりの空き地で、風祭が着るような白いスーツを身に着けた、やくざの死体が発見された。このやくざの遠い親戚だという富豪の屋敷に事情調査に赴いた風祭と麗子は、富豪の息子・娘たちから事情を聞く。そして殺されたやくざのアパートでは、風呂場から多摩川の水が入っていたとおぼしきバケツを発見する。犯行現場はここなのか。しかし・・・
 おりしも桜が舞い散る春の夜、富豪が所有する自家用の車の上には桜の花びらが降り積もっていた。
 「目の前にあるヒントにお気づきにならないとは―お嬢様にはがっかりです」と影山の、にくらしい一言。

「怪盗からの挑戦状でございます」
 宝生家に<怪盗レジェンド>からの挑戦状が届く。父のいいつけに従い、かかりつけの私立探偵・御神本光一を頼りにすることになった麗子。怪盗は高森鉄斎の名作、純金で彫られた『金の豚』という彫刻をねらっているらしい。果たして予告どおりあらわれた怪盗はまんまと皆を眠らせて『銀の豚』の塑像を奪っていく。だが、部屋の前では影山が見張っていたのだ。金の豚ではなく銀の豚を獲っていったのは何故なのか?
 影山はいきさつを解説しながら、「お嬢様、いま少し脳みそをお使いになったらいかがですか」。

「殺人には自転車をご利用ください」
 老婦人が食卓の赤ちゃん椅子に座らされた状態でこと切れていた。関係者には元競輪選手がおり、彼が怪しいのだが、いくら競輪用自転車とはいえ、犯行時間に自宅と現場を往復するのは至難の業だ。なおのこと、聞き込みで風祭警部が得た情報に従うと、犯行時間にその付近を往復していたとすると、時速90キロで走りぬいたことになる。
 そこで影山は言う。「お嬢様は風祭警部様とどっこいどっこいだと申し上げているのででございます」

「彼女は何を奪われたのでございますか」
 カトレア学園の女子大生が絞殺されているのが発見された。白いワンピースを着ていたが、ベルトやメガネなど身に着けていた装飾品がすべて奪われていた。その前日、被害者に出会った後輩の女子大生が、そのときの彼女の行動に不思議な違和感を覚えていたと証言する。被害者が所属していた映画研究会のサークル仲間とはべつに、卒業後の今も付き合っているというサークルの元部長を訪ねた麗子と風祭は、その男が怪しいと確信するのだが。
 「この程度の謎が分からないとは、お嬢様は本当に役立たずでございますね」

「さよならはディナーのあとで」
 夏の盛り、資産家が殺されていた。自分の持ち物である木刀で撲殺されていたのを次女が発見したのだ。最近、このあたりには泥棒騒ぎが続いており、泥棒に気付いた当主が抵抗したところを返り討ちにあったのかと思われた。
 「失礼ながら、お嬢様は無駄にディナーをお召し上がりになっていらっしゃいます」
 そして、事件は解決。その後、風祭警部が警視庁へ栄転するという辞令が伝えられる。最後の最後に、麗子は風祭と屋台の焼き鳥屋で別れのディナーを食べるのだった。

 第3作。超マンネリ。謎らしい謎もない。勝手な判断で、謎解きとはいえない。などとネットでは悪評ふんぷん。
 とはいえ、面白い。このギャグは若者向けとは思われない。そこそこの年寄りが読んでこそ、面白みがあるのではないか。
 ということで、映画化を控えて、夏に向けて話題が盛り上がりそうな一作。

 

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