2010年4月12日月曜日

「Nのために」

「Nのために」
湊 かなえ

単行本: 256ページ
出版社: 東京創元社
ISBN-10: 4488024556
ISBN-13: 978-4488024550
発売日: 2010/1/27

被害者・野口貴弘、奈央子夫妻。杉下希美(のぞみ)、友人の安藤望。アパートの住人・西崎真人。希美とは同郷の同級生・成瀬慎司。アパートの家主・野原さん。主要な登場人物のすべてが「N」のイニシアルを持つ。
「N」が「N」のためにと思って仕掛けた罠。そして相手の「N」が、ほかのもうひとりの「N」のために、そうしなければならないと思いつめたこと。しかし、その「N」の思惑は「N」には通じず、それぞれの思いが交錯し、ひとつの頂点を迎えたとき悲劇が起こる。

悲劇は起こった。そして著者お得意のモノローグが始まる。
そこで明かされていく、それぞれの「N」の過去、事情、思慕、嫉妬、憧憬。

情念が縦糸、横糸に織り込められた物語、とよく言うが、ここではそれが斜めに行きかうことで一つの断層がまた別の意味を持つことになる。
映画化に合わせて最近文庫になったデビュー作「告白」では、多方面からの告白が、ひとつの事件の多面性を浮かび上がらせる結果になって、それぞれの告白者への感情移入があの結末のショックへと盛り上がらせてくれた。今回はそれぞれのモノローグの方向が斜めに交錯する感じで、TVドラマのように、あるシーンが、他の角度から見たとき、一瞬そのシーンがよぎる、といったおもむきか。

著者の新たなステージ、と評された、新たな代表作。

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