2010年8月14日土曜日

とざい東西、ここにお披露目いたしまするは

「星と輝き花と咲き」
松井 今朝子

単行本: 266ページ
出版社: 講談社
言語 日本語
ISBN-10: 4062163551
ISBN-13: 978-4062163552
発売日: 2010/7/16

第2章。明治19年、10歳の少女とその母親が神戸港から東京に向かって出発する。藤田園という少女は耳で聞いただけの義太夫節を覚え込み、天性の声で朗々と謡い上げることが出来たのだ。
義太夫の三味線方である園の母は早くから少女の才能に気付いてはいたが、芸人のはかなさ、悲しさを知り抜いていることから、園を芸人にすることには抵抗を 感じていた。だが周囲の人たちや文楽の師匠にも認められたことで心が揺れる。そして前年の大阪の大洪水が追い打ちをかけ、遠い親戚である東京の医者を頼り に上京することになったのだ。

義太夫と浄瑠璃は異なる、ということが、今、調べてみて分かった。浄瑠璃の一派なのだそうだ。浄瑠璃のなかには常磐津、清元などがあるということで、派生的には文楽、歌舞伎の音曲の元になるということかな。

少女は東京でも義太夫の語りの才能を発揮したことから、有象無象がうごめき始める。
まず、近藤久次郎という芸能プロデューサー。彼が今後の園の人生を支配することになる。
そして、最初のごひいきになったのは芳町の芸者。園のことを男と思い込んだことでとんだ勘違いを産むエピソードは巻末のひとつの伏線として効果を出している。
だが、園の才能はおのずと花開くことになる。東京の権威のもとで披露した義太夫節が認められ、みずから竹本綾之助を名乗ることを訴え、その通りになる。
その後の活躍は元祖アイドルといわれるごとくすさまじいもの。

「竹本綾之助はそんじょそこらの芸人じゃねえ。天からの授かりもんだ」
学士たちの追っかけ。「どうする連」といわれる応援隊。
同じ日に2軒の寄席でトリを務めるなど、前代未聞の活躍が始まる。
それを見守るステージママの母、俥引き、マネージャー。

その栄光の日々にも綾之助の女心は揺れ動く。芸人たちの私生活を目の当たりにし、また周囲からも刺激を受けながら、芸に結びつく恋愛感情は抑えてきたのだ。
だがそこに、ひとりの男があらわれ、綾之助の人生は反転する。

突然の引退宣言、それがもたらす周囲への影響。そして、、、、

一気読み確実な作品。
浄瑠璃や義太夫に興味のある方もない方も、とざい東西〜 ひとりのアイドルの誕生にお立ち会いくださいませ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

爺の読書録