2010年8月1日日曜日

暑い季節にスキッとしよう!

「ダブル・ジョーカー」
柳広司

単行本: 257ページ
出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング)
ISBN-10: 4048739603
ISBN-13: 978-4048739603
発売日: 2009/8/25

2010年度のミステリー・ベストで「このミス」「文春」ともに2位にランクされた一級品。09年はそれぞれ3位と2位の高評価だった「ジョーカー・ゲーム」の続編。

表題作「ダブル・ジョーカー」では結城中佐のD機関に、敢然と戦いを挑む<風機関>との暗闘を描く。
戦中慰問団の<笑わし隊>が持ち込んだ、満州でのスパイ合戦「蠅の王」。
うるわしの仏印の夜が不気味に溶解していく「仏印作戦」。
結城中佐の若き日の暗躍を描く「柩」では<魔術師>というコードネームの由来がドイツ師団大佐の思い出として語られる。
巻末の「ブラックバード」では太平洋の陽光まばゆいロスアンゼルスが暗雲に包まれていく12月の初めの数日が描かれ、結城中佐とD機関がどう変貌していくのか、今後の展開があるのか、つい確認したくて検索してみたが、あまり手応えなし。

という5篇が収められた短編集。
かつての「陸軍中野学校」と比べられたり、こんな本を読んでると馬鹿になります、と言われたりしているが、ミステリー・スパイ小説の王道を闊歩する結城ワールド。
刊行から随分と間が空いてしまったが、暑い季節にすんなり読めるのが、この手の作品の楽しみかもしれない。

さて、次があるのか。太平洋戦争を防ぐための防諜機関だったはずのD機関が、いざ戦争が始まってどう変貌するのか、はたまたエピソード・ゼロに戻っていくのか。
期待は又の暑い季節のお楽しみにとっておきませう。

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