2010年12月17日金曜日

仮想世界を悪用するやつは日本の道路を歩くな

「プラ・バロック」 
結城 充考

単行本: 376ページ
出版社: 光文社
ISBN-10: 433492655X
ISBN-13: 978-4334926557
発売日: 2009/3/24

 刊行は昨年春と、少し古い本だけど、記憶の隅っこを刺激していて、読んで読んで、という圧力があった。
 ようやく、手にとって読むことが出来た。だが、内容は決して古くはない。
 第12回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作、ということで評価は固まっているのだが、ブックレビューなんかでは、毀誉褒貶が交じる。

 主人公は神奈川署・機動捜査隊の女刑事。クロハ、とカタカナで表記される。彼女だけではない。クロハと対立する上司のカガ、コンピューターに強く彼女の強い味方となるサトウなど、周囲の人物はすべてカタカナで表される。この書き方で翻訳ものめいた印象を与えようというのか、ハードボイルドらしさを出そうというのか、著者の意図は不明だが、逆に物語りに入り込むときの障害ともなりそう。
 だが、被害者は漢字で書かれている。

 機動捜査隊での最初の事件は殺人、鋭利な金属棒で頚動脈を突き刺され失血多量で死に至らしめる凶悪犯。しかも何件か連続して発生している。
 その捜査班から締め出されたクロハが向かったのは港湾倉庫。倉庫の貸し出しが延滞になっており、民事的に問題になるかもしれないので警察に立ち会ってもらい開封するというのだ。しかし、その冷凍倉庫から現れたのは整然と並んだ14人の冷凍死体。
 しかも、同じような冷凍死体が再び都内の違う場所からも発見される・・・

 ショッキングな事件が続き、波乱の展開だが、途中にクロハが訪れる仮想世界の描写がある。そこでひとときの安らぎを得ているのだが、そこに謎の凶悪なアバターが出現する。
 仮想世界の描写はさきの「ロードサイド・クロス」が秀逸だったが、日本でもここまでの愛好者が育っているというのは驚き。ま、爺の周辺にはそんなのがいないというだけのことだろうが。そして仮想世界にある塔の最上階に、あるものが掲示されているという情報がもたらされ・・・
 
 シリーズで第2作も刊行されているので、また、その時に。
 

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