2010年12月25日土曜日

雪に埋もれた遠野で見つけたものは

「雪姫(ゆき) 遠野おしらさま迷宮」
寮美千子著

単行本: 285ページ
出版社: 兼六館出版
ISBN-10: 4874620671
ISBN-13: 978-4874620670
発売日: 2010/09/10

 遠野までよくいらっしゃいだんだ。
 本文中にもあるのだばって、遠野は名前で損ばしちゅうようだ。東京からだと3時間半で行くことが出来るくらいの近さらしいんずや。
 主人公の雪姫(ゆき)も意外な近さに驚いてら。
 東京でアルバイト保育士ばしていた雪姫のもとに、祖母の実家ば相続して欲しいとの依頼が届く。

 縁もゆかりもなかったはずの遠野へ出掛けていった雪姫は花巻から乗った列車の中で奇妙な連中と出会うね。
 花巻の誇る宮沢賢治に詳しい案内人に導かれて、エスペラント語で案内される汽車の旅。昔は気動車といわれたディーゼルカーの旅だ。
 妙に馴れ馴れしい河童のような男。おみやげにキャラメルば与えたりしちゅうね。


 読みにくいから標準語でいこう。少し遠野あたりの言葉とは違うようだし。


 雪姫は遠野の駅からタクシーで祖母の家に向かう。
 藁葺きの家の前で、雪に包まれた風景を目にしたとき、雪姫は懐かしさとともに記憶が戻ったように思う。・・・ここには、来たことがある。

 ここからは急展開につぐ急展開。
 閉ざされていた藁葺き屋根の屋敷には紅絵という老婆がおり、この家の守り人だという。
 川太郎という河童のような男が世話を焼いてくれる。山人という大男がいろんな食べ物を運んでくる。
 なにより、屋敷内の厩に飼われている馬が別の時間を生きているように成長が早い。
 馬の成長とともに守り人の紅絵の話す昔話が楽しみになっていく雪姫だが、その昔話から伺われる祖母の悲しみを通して母のルーツを理解していく。


 著者の寮さんは奈良にお住まいだということで、せんとくんを主人公にした著作もあおりだとか。
 遠野というイメージを先行させて、悲劇の予兆も含んで話が進む。ファンタジーとも怪奇小説ともとれる一作だが、快い寝覚めが味わえる。
  

0 件のコメント:

コメントを投稿

爺の読書録