2010年12月9日木曜日

過去との再会がもたらすカタルシス

「再会」
横関 大

単行本: 348ページ
出版社: 講談社

ISBN-10: 4062164655
ISBN-13: 978-4062164658
発売日: 2010/8/6

 第56回江戸川乱歩賞受賞作。
 子供が万引きした、との電話で呼び出された母親。小さなスーパーの店長は母親を脅迫する。30万円出せば学校へも秘密にしてやる。
 次の日、その店長が拳銃で殺されているのが発見される。
 店長は、母親の幼なじみの兄だった。



 幼なじみは4人。ひとりは母親の元夫、ひとりは神奈川県警の刑事、そして殺されたスーパー店長の弟。
 小学校時代、事件がおこった。強盗犯を追いかけていた警官が殺され、それを目撃していた子供たちが警官の拳銃を手に入れたのだ。それが23年の時を超えて、店長殺害の凶器になったという。

 子供たちは廃校になる小学校の校庭にタイムカプセルを作って、その拳銃を埋めることにした。・・・はずだった。
 その時の秘密をかかえた4人が、今回の店長殺害事件で23年ぶりに顔を合わせることになる。

 4人それぞれの視点で事件の流れが描かれることで、なにやらはぐらかされていくような印象を受ける。それがテクニックだったりするのだが、動きが少ない分、はがゆさが残る。


 県警本部から派遣されたエリート警部が活躍する。
 万引き事件をもみ消そうとする元夫婦、母親をかばって兄殺しを自白する弟、警官でありながら過去の秘密が暴かれるのを恐れる刑事。彼らをかばいつつ、彼らの秘密を共有していく。それはなぜか?

 やがて明かされる店長殺しの真相。
 そして23年前の事件の実態。
 その裏に潜んでいたエリート警部の秘密。
 再会がもたらした、それぞれのカタルシスがうれしい。

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