2011年5月2日月曜日

湊かなえのセカンドステージで鎖が閉じる

「花の鎖」
湊 かなえ

単行本: 296ページ
出版社: 文藝春秋
ISBN-10: 9784163299709
ISBN-13: 978-4163299709
ASIN: 416329970X
発売日: 2011/3/10

<たとえば花 たとえば雪 たとえば月>
 湊かなえさんの最新作、そして話題作。
 ミステリー色は薄いが、3人の女性にまつわるエピソードが積み重ねられ、大きなうねりが最後に収縮されていく。

 梨花はお金に困っている。講師をしていた英会話スクールが倒産してしまい、祖母の手術費が必要なのだ。
 美雪は夫の和弥が郷土画家の記念館のデザインにやる気を出しているのを応援しているのだが、学生時代の友人にかきまわされて。
 紗月はイラストレーターとしての腕をかわれて公民館の水彩画教室で講師をしている。

 3人のそれぞれのつながりについては定かではない。
 ただ、3人とも同じ町にいたことがあるらしい。
 町出身の著名な画家。香西路夫。
 香西がよく描いたという「あめふり渓谷」にも出掛けていく。
 3人の共通項は和菓子店「梅香堂」の金つば。
 そして梨花は毎年花のプレゼントを贈って来てくれる、謎の「K」に、祖母の手術費を貸してもらいたいと考えて。

<花について、雪について、月について>

<花、前夜 雪、前夜 月、前夜>

<花、動く 雪、動く 月、動く>

<花の願い、雪の願い、月の願い>

<第6章 または雪月花(雪の決意、月の決意、花の決意)>
 という章分けで物語は進行する。それぞれの章で3人が抱える問題を解決するために出掛けていくのが「雨降り渓谷」であり「八ヶ岳」だったりするのだが、どこか、すれ違う感覚があり、共通する人物が何か影を残して行く。
 
 この作品が湊かなえさんのセカンドステージという言い方で宣伝されている。
 第2ステージというより、第一作の「告白」いらい今ひとつ納得できる作品に巡り合わなかった気がしていたが、今回は、失礼ながらベスト2ではないか、と評価しておきたい。

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