2011年7月16日土曜日

さあ、しゅららぼんの世界へ


「偉大なる、しゅららぼん」
万城目学

単行本(ソフトカバー): 568ページ
出版社: 集英社
言語 日本語
ISBN-10: 4087713997
ISBN-13: 978-4087713992
発売日: 2011/4/26

 表紙を見ていただこう。
 なにやら石垣の上に制服姿のふたりの少年。ともに詰襟の制服ではあるが、トランペットを膝に置いているほうは真っ赤な制服ではないか。
 そして眼下に広がる水面、これが琵琶湖だ。かなたに見える島は竹生島なのだね。
 さあ、物語が始まる。

 万城目ワールド全開の一作。
 というか、かなりファンタジー色の強い作品になっている。
 主人公が高校生という設定もあり、ある力を持った一族の、生き残りを賭けた戦い、となると、くだんのハリーポッターはじめ数あるファンタジーものの定番とも受け取られそう。
 とはいえ、そこは万城目さん。独特のユーモアあふれる筆致が、のんびりとした琵琶湖東岸の風景にマッチして飽きさせない。

 僕、日出涼介、高校1年生。琵琶湖の西岸に住まいする日出家の次男。兄は東京でマジシャンとして名を派しTVにも出演している。そのマジックの技に、ある力を発揮しているらしい。
 日出淡十郎、日出本家の嫡男。琵琶湖東岸に江戸時代の初めから、巨大な城ともいうべき屋敷をもち、分家すべてを支配している日出本家の次代を担う存在。若殿ぶりが板に着いている。姉は清子といい、涼介の兄と同級生。
 棗広海、日出家と対立する棗家の長男。落魄した家系ではあるがある力をもち、その存続を維持するために琵琶湖岸に住むことを余儀なくされている。

 この3人が高校に入学したことで、戦いの幕が切って落とされる。
 棗にとっては日出家こそが自分たちの領地を奪い棗一族の没落を画策した憎い相手なのだ。
 しかし、涼介は広海の妹・潮音に一目惚れ。
 そこにからんでくるのが、同じ新入生の速瀬。校長の娘なのだが、淡十郎の片想いにも関わらず、本人は棗に好意を寄せてしまったから、さあ大変。
 
 力を持つとはいえ、その力の使い方さえ学び直さねばならない涼介たち。
 姉の清子はグレート清子などとあだ名されるほどの力の使い手。しかし今はその力を持て余し、御殿の中から出ない生活を送っている。まあ、広大な城塞ともいうべき御殿なので、裏山までがその敷地内であり、馬に乗って散歩し放題という自由気ままな暮らしぶり。その姉を中心にして日出家の危機に対処することになる。
 
 対立の構図はいつか日出・棗家連合と、両家を滅ぼそうと校長が発現する謎の力との戦いの様相を帯びてくる。
 そして、しゅららぼんとは何か、との読者の疑問への説明もさらりと解明されるが、実は・・・

 大いなる琵琶湖と偉大なる存在、そしてしゅららぼん。謎のパワーを浴びたまえ。
 

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