2011年7月26日火曜日

新たなるヒロインの誕生に拍手、そして乾杯!


「飲めば都」
北村薫

単行本: 356ページ
出版社: 新潮社
ISBN-10: 4104066079
ISBN-13: 978-4104066070
発売日: 2011/05/20

 やはり、北村薫。主役は女性、というのも定番といえば定番。
 今回は女性編集者ということでいわば、自家薬籠ともいうべき、勝手知ったる職業人を選んできた。
しかし、ただものではない北村薫、そして主人公・小酒井都(こさかい・みやこ)。

 都さん、職業柄、飲む機会も多い。また、先輩や作家さんたちとの宴席にも参加せねばならない。そこで起こる様々な出来事。
 飲んで乱れるというのではないが、度を過ぎると、都さん、意識がなくなるのだ。これが物語の波をうねらせる。

 先輩たちもそうそうたるメンバー。
 書籍編集部の書ネエ、文庫編集部の文ネエ、など女性軍をはじめ、酒癖の悪い上司の男どもに立ち向かい、職業人として、酒飲みとして成長していく。

 エピソードは12章に分かれている。ひとつの章の中で一年以上の月日が流れることもあり、全体では10年以上の月日の経過がある。
 ほほえましいエピソードやら、女性という立場からの悔しさなども描かれ、女を描ける作家として、北村さん、また評価が上がりそう。

 都さんの入社から始まった物語が、先輩や上司に導かれ、作家やイラストレーターとの交流のなかで磨かれて、酔っぱらいとしても箔がついていく。そこでの出会いから見事なハッピーエンドを迎えることになるのだが、さて、続きはあるのだろうか。

 なおかつ、ベテランの語り口がいよいよ名人芸の域に達し、さながら落語の一編を聞くごとく、すらりと流れていく物語に身をゆだねているうちに、心地よくなり、また、お酒がほしくなるという次第。
 

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