2012年1月10日火曜日

「神君家康の密書」

「神君家康の密書」
加藤廣

単行本: 295ページ
出版社: 新潮社
ISBN-10: 410311035X
ISBN-13: 978-4103110354
発売日: 2011/08/22

家康が応じた密約を胸に、天下を半日で決着させた猛将・福島正則。蛍大名と侮られつつ、強かな籠城戦で西軍主力を翻弄し逆転劇に道を拓いた京極高次――。仕掛けあう豊臣恩顧の大名たち、糸を引く家康の水も漏らさぬ諜報網。戦国覇道のキャスティングボートを握った武将たちが、日本を最大震度で揺さぶった三つの謀略秘話

「蛍大名の変身」
 昨年の大河ドラマでもおなじみの京極高次。蛍とは奥様のお初さん。奥方の尻の七光りで勢力を保っているホタルだ、などと揶揄されて、時の権力者からは正当な評価もされていない。そこに動乱の時代がくる。時代の波が関が原へとうねっていくとき、高次がやむなくとった行動が、思わぬ方向へ時代を進めていくことに。

「冥土の茶席」 ~井戸茶碗「柴田」由来記
 こちらも昨年の大河「お江」にまつわるサイドストーリー。茶の湯を武家の特権として利用しようとしていた信長が、論功行賞として柴田勝家に与えた茶碗。勝家と前田利家との数奇な運命の変転の裏側で、ひっそりと生き抜いて来た茶碗が、越前落城とともに三姉妹に託される。前夜のうちに市と娘たちとの別れと形見分けはすまされており、そのシーンが思い出される。そして勝家自身から、娘たちへの形見として茶碗が与えられた。叔父信長から巡り巡って茶々のもとにやってきた茶碗は、茶々の持参品として秀吉のものとなる。それが、家康に取り入ろうとする秀吉の気まぐれで、秀忠の側近・青山氏に下げ渡された。
 有為転変、茶碗は今、渋谷の根津美術館に所蔵されているという。こちらは根津美術館のホームページから、井戸茶碗・銘「柴田」。



「神君家康の密書」
 豊臣家の家臣として秀頼を守り抜くと誓っていた福島正則。家康は秀頼安堵の誓い状を書くという。それならば、と関ヶ原では東軍の利のために働き、豊臣家の安泰に寄与したつもりであったが、戦後は広島に移封される。大阪の陣ではなす術もなく落城を見守ることになったが、家康の密書を手掛かりにして再起をはかる。それは戦国武士としての最後の矜持であり、意地の張り合いでもあったのだ。

 キーワードは「落城」。そして、意地。女の意地、男の意地が落城を超えて時代を作って来た。
 

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