2012年1月14日土曜日

カササギたちの四季が世界を塗り替える


「カササギたちの四季」
道尾秀介

単行本: 283ページ
出版社: 光文社
ISBN-10: 4334927432
ISBN-13: 978-4334927431
発売日: 2011/2/19

開店して2年。店員は2人。「リサイクルショップ・カササギ」は、赤字経営を2年継続中の、ちいさな店だ。店長の華沙々木は、謎めいた事件があると、商売そっちのけで首を突っ込みたがるし、副店長の日暮は、売り物にならないようなガラクタを高く買い取らされてばかり。でも、しょっちゅう入り浸っている中学生の菜美は、居心地がいいのか、なかなか帰ろうとしない。この店には、少しの秘密があるのだ――。あなたが素直に笑えるよう、真実をつくりかえてみせよう。再注目の俊英による忘れ得ぬ物語。

 4編でつづられる一年の物語。
 ほんわかとした事件を、リサイクル・ショップ店長の華沙々木(かささぎ)が座右の書である「マーフィーの法則」をもとに、鮮やかに解決する。だが、その裏にはもうひとつの事実が・・・といった構成で、ややもすればルール違反の叙述がありそうだが、そこはそれ、直木賞受賞第1作という、はなやかで、けれん味いっぱいの作風をみせた才能を素直に喜ぼう。

 春 鵲の橋
 ブロンズ像放火未遂事件。倉庫にしまってあるブロンズの像が放火され、台座の木部が燃えてしまった。これでは売り物にならない。このブロンズを作ったのは近所の工作所のようだ。訳ありの事件を店長の華沙々木が見事に解決するのだが。実は真相は別のところにあった。

 夏 蜩の川
 秩父の木工所が家財道具をまとめて購入。配達に訪れた店長の華沙々木と日暮、そしてなぜか菜美。だがそこでは神木損壊事件が起こっていた。華沙々木はいつもどおり明快な推理でその謎を解いたのだが・・・

 秋 南の絆
 店に入り浸りの中学生、南見菜美との1年前の出会いを思い出す、華沙々木と日暮。それは両親が離婚してやりきれない思いを抱いていた菜美の家で起こった、猫のナーちゃん盗難事件だった。ナーちゃんはまもなく無事に帰って来たが、華沙々木はみごとにその謎を解き、菜美の尊敬を得ることに。だが日暮はその真相についてある秘密を持っていた。

 冬 橘の寺
 いつもガラクタを売りつけられる黄豊寺の住職からみかん狩りの招待が届く。クリスマスも終わった冬休みのある日、雪に閉じ込められた山寺で起こった、貯金箱損壊事件。寺の住職と息子の事情に共感を覚えた日暮の眼前に泥棒が現れ・・・

 ユーモアミステリという新しい分野に挑戦した道尾秀介。そこで奏でられる心優しい謎解きが楽しい一作。
 

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