2012年2月17日金曜日

悪道を突き進む悪童たち


「悪道」 
森村 誠一

単行本: 406ページ
出版社: 講談社
言語 日本語
ISBN-10: 4062164868
ISBN-13: 978-4062164863
発売日: 2010/8/10

人間とは、宿命という檻の中で競り合う動物なのだ。
歴史を覆す大胆な設定で、究極の悪と、人間の本性を描く。
著者10年ぶりの単行本書き下ろし!

孤独の行路の狩人か、宿命の檻の終身囚となるか。おれは宿命というものと、命ある限り対決する。
百花繚乱たる人間群像ひしめく元禄の江戸。恐るべき独裁者、犬公方をめぐって張りめぐらされた巨大な罠とは何か。その仕掛けを見破った下忍と少女の生き残りをかけた壮絶な戦いの果ては!

「大胆不敵な着想をベースにした逃亡と抵抗のドラマが、権力への怒りと、人間性への共感を呼ぶ。これが物語だ、これが森村誠一だ」――(文芸評論家・細谷正充氏)

講談社創業100周年記念出版
45回吉川英治文学賞受賞

 将軍・徳川綱吉が急死。
 それも柳沢吉保の私邸で、能を舞いながら突然倒れたのだ。御殿医の山瀬養安が脈をとり、その死を確認した。
 いままで綱吉とともに天下を牛耳っていた吉保は、おのれの保身と幕府の今後を思い、対策を練る。そこに綱吉や将軍生母の桂昌院とつながりの深い僧・隆光が耳打ちする。
 「影をお使いなされ」
 
 森村誠一さんの時代劇は初めて。
 昨年10月に続編が出た「悪道」シリーズの、これが第一作。
 影武者ものは面白い。隆慶一郎さんの家康ものを読んだときには驚いたものだ。歴史のはざ間でいきいきと影武者が動き回る。その行動や結果にはこういう意味があったのか、さもあらん、と感嘆した覚えがある。
 今回、綱吉の影武者となった男は、綱吉以上に頭脳プレイが鮮やかで、生類憐れみの令で苦しむ庶民を救う手立てを講じたりする。
  
 だが、主人公は影武者その人ではない。
 本能寺の変いらいの徳川家のお抱えとなっていた伊賀者の末裔・流英次郎、本物の綱吉の死を看取った医師・山瀬養安の娘おそで、そして影をいざそのときに役立てるため育てて来た影役の息子・立村道之介。
 影武者を影だと知る3人を、柳沢吉保は追いつめる。
 今の将軍綱吉が影武者だとばれてしまうと、吉保には困ったことになる。
 英次郎とおそでは江戸を抜け出し、陸奥を目指す。10年ばかり前に亡くなった芭蕉の足跡をそのまま辿る、おくのほそ道の旅になる。
 そこで、あたかも芭蕉に導かれるように、影武者の出生地とおぼしき村の存在が・・・
 そして、吉保が送った忍び・猿蓑衆の急襲、それを助ける道之介とともに、幾多の危難を乗り越えるたびに、仲間が増えていく。
 
 悪道とは、の説明は実はことし出た続編の冒頭に出て来る。
 仏教では地獄・餓鬼・畜生・阿修羅の四悪道。また優れたもの、超越したものを示す時にも悪を接頭語にする言葉もある。タイトルの悪道とは通常の道ではなく、克服せねばならない超常の道の意だという。
 
 そして3人を中心にした集団に、ごまのはえ上がりの馬子、剣客、スリ、猿蓑衆から抜け出した忍びなどが加わり、襲い来る敵を逆襲し、奥の細道をたどりながら、やがて日本海・酒田まで行き着く。そして、英次郎は、北前船に乗って江戸を目指す、と告げるのだ。
 江戸では、仙谷伯耆守が新しい綱吉のよき協力者として、その実態を知らぬまま仕えていた。吉保はおのれの愛人・おそめを綱吉の側室に差し出し、生まれる子供を世継ぎにさせようと画策していた。折りも折り、赤穂義士の吉良邸討ち入りがせまっている。
 
 世情騒然とした江戸で彼らを迎えるのは、立派に将軍のつとめを果たしている影武者の綱吉。そして南町奉行所の同心・祖式弦一郎は、すべての謎を解き明かしたうえで、影の綱吉や英次郎に力を貸すことになる。
 そこで綱吉と英次郎との間にかわされた密約とは・・・
 

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