2012年4月17日火曜日

夏天の虹の下で、澪はよみがえるか


「夏天の虹」みをつくし料理帖7
高田 郁

文庫: 312ページ
出版社: 角川春樹事務所
言語 日本語
ISBN-10: 4758436452
ISBN-13: 978-4758436458
発売日: 2012/3/15

想いびとである小松原と添う道か、料理人として生きる道か・・・・・・澪は、決して交わることのない道の上で悩み苦しんでいた。「つる家」で料理を旨そうに頬張るお客や、料理をつくり、供する自身の姿を思い浮かべる澪。天空に浮かぶ心星を見つめる澪の心には、決して譲れない辿り着きたい道が、はっきりと見えていた。そして澪は、自身の揺るがない決意を小松原に伝えることに―――(第一話「冬の雲雀」)。その他、表題作「夏天の虹」を含む全四篇。大好評「みをつくし料理貼」シリーズ、〈悲涙〉の第七弾!!

「冬の雲雀-滋味重湯」
 小松原との婚約を解消し料理の道に生きることを決意した澪だったが、その心星にしたがうためにはらった犠牲の重さに自分自身が耐えられず、ついに身体をこわしてしまう。おまけに、この一年、新たな創作料理は店の人々に作ってやったものばかりだと澪が気付いたとき、おりしも今年の料理番付が発表される。そこには・・・

「忘れ貝-牡蛎の宝船」
 体をこわした澪のために、料理人の又次が吉原から助っ人にやってくる。自分の決意を分からせようと、野江との思い出の貝殻を弁当箱に潜ませ、又次に託す澪。昆布を宝船に見立て、牡蛎を味合わせる趣向を編み出したが、それもやがて街の飲み屋が真似をするにいたる。如月がやがて終わる頃、小松原の婚礼が行われるのを見た澪は・・・

「一陽来復-鯛の福探し」
 一大事が起こる。澪の体の異変は嗅覚、味覚にまで影響を及ぼしたのだ。澪は味付けが分からず、香りも感じなくなってしまう。つる屋の料理は又次が毎日手助けすることになり、店の経営にはさしつかえがなくなった。澪は自分の体の不調よりも、客に料理を食べさせることで不自由な体を回復させることになるならば、と鯛の粗炊きを「福探し」として客に供することに。そんな澪に日本橋の一柳の店主、柳吾は、鼻と舌が眠っている間に料理人としてすべきことがあるはずだ、と器を見る目を養うことをすすめるのだった。

「夏天の虹-哀し柚べし」
 筍の季節、初鰹の季節。2ヶ月前に又次が準備した柚べしが食べごろになったころ、又次が吉原へ帰ってしまう日がやってきた。お別れの会を終え、吉原の大門まで又次を送っていった澪とつる屋の店主だが、そこで大変な事件に遭遇する。

 ということで昨年8月から7ヶ月ぶりの澪さんの登場。
 おまけに、次の巻までには1年余裕をいただきたいとのお断りもあり、次が待ち切れない読者は念入りに読み込むのだろうが、この悲痛な物語はそうそうゆったりとは読ませてくれない。
 小松原との別離に悲しむ余裕もなく料理の道に戻った澪には、お客の要望があり、店の人々に対する遠慮があった。周囲の人々はそれぞれの立場で思いやり、気遣ってくれるのだが、澪の気を晴らせるのは料理だけなのだろうか。おまけに料理人としての危機が澪を襲う。波乱の第7巻。

 作中、「鯛の鯛」はよく聞くが、「鯛の九つ道具」については初めて目にしたので、調べてみた。以下のURLに詳しくイラストを交えてアップされているので、ご参考までに。

以下、このブログでの過去の記録(降順)。
2巻目からだけど、長いおつきあい。

「心星ひとつ」11年8月刊

「小夜しぐれ 11年3月刊

「今朝の春」10年9月刊

「想い雲」10年3月刊

「花ちらしの雨」09年10月刊

0 件のコメント:

コメントを投稿

爺の読書録