2012年11月15日木曜日

ショートスカート・ガールが仕掛けた罠は

「ショートスカート・ガール」
加藤 眞男

単行本(ソフトカバー): 234ページ
出版社: 講談社
言語 日本語
ISBN-10: 4062176033
ISBN-13: 978-4062176033
発売日: 2012/6/28


横浜の弁護士・添野のもとを臼井あさぎという女性が相談に訪れた。15年前に駅で自分のスカートの中を盗撮した犯人が、今判ったので訴えたいという。添野は時効だし、当時は盗撮を犯罪とする法律もなかった、とあきらめるように諭して帰した。その後あさぎは消息をたつ。それから3週間後、朝の電車内で痴漢騒ぎが起きた。痴漢は被害者に腕を掴まれ、大怪我をしたという。過剰防衛とされ、警察に拘留された被害者女性は添野を弁護人に選任する。被害者は臼井あさぎその人であり、その後事件は意外な展開をみせる--! 
<担当者コメント>
島田さんと講談社がタッグを組んで昨年より発動したプロジェクトですが、おかげさまで 200本を越える応募をいただき団塊の世代の「熱気」をあらためて確認しました。「ショートスカート・ガール」は、軽いタッチで読みやすいながらも、作者の社会体験が反映された重厚さも兼ね備えた作品です。ぜひご一読をお願いします。
<島田荘司選 ベテラン新人プロジェクト受賞作!>
新人賞の選考委員をするようになって二十年以上が経つが、このような圧倒的パワーを見せる新人に対するのははじめてだ。しかもそれが若者でなく、退職高齢世代に現れた。おそらくはこういうことが、モノづくり日本を支えた団塊の世代の持つ秘密であり、力なのであろう―――選評より

 臼井あさぎ。長野市で一人住まいしていた新入社員のころのこと。新調したスーツが手違いで超ミニスカートに仕上がってきた。気合を入れて着込んでいったが、スカートの中を盗撮されてしまう。そのときは仕事の前で忙しく、盗撮犯を交番に突き出して会社へ出勤してしまった。ところが、当時は迷惑防止条例もなく、犯人は警官に諭されただけで、事件扱いもされずにそのまま釈放されてしまう。
 そして15年後。あさぎは、最近TVで話題の、弁護士であり大学教授の吉見渓慈郎がそのときの盗撮犯人ではないか、という疑いを抱き弁護士のもとを訪れた。

 添野耕三、横浜の弁護士。あさぎの訴えを聞いたものの、15年前の事件で、当時の条例からみても立件することはむつかしいと返答する。

 「ベテラン新人プロジェクト」という新人賞をとった作品。選考委員の島田荘司さんや爺と同年輩のベテラン新人だという。
 
 あさぎは、その依頼をした3週間後、電車で痴漢を撃退する騒ぎを起こす。痴漢の手をつかんで電車の扇風機に指を突っ込み怪我をさせたのだ。いちやくTVでも話題になり、あさぎは時の人だ。その痴漢というのは15年前の長野での盗撮騒ぎのときに、交番勤務をしていた警官の富田だった。

 
 TVの報道で驚くべきことが分かる。富田は、あさぎにストーカー行為を繰り返していたというのだ。では痴漢退治をしたあさぎは、その報復をしたというのだろうか。このトラブルは双方からの訴えもなく、事件として扱われることもなかった。
 
 そして半月後、あさぎの部屋に侵入しようとした富田を、あさぎが包丁で刺殺する。それも、咄嗟に110番通報をした携帯電話がつながれたままで、いわば実況中継の中での事件だった。
 裁判が始まり、あさぎの弁護は添野が所属する法律事務所長が担当した。その経過がワイドショーでも報道される。
 弁護士の吉見も番組のなかでコメントをかさねるが、15年前の盗撮犯は吉見ではないかというイエロー新聞紙のスクープが世間をにぎわすことになっていく。
 それは編集局に届いた一通の投書が訴えていたものだった。その投書の差出人は「S.S.G.」となっている。もちろん、あさぎは拘留中で手紙を出せるわけもない。では、誰が・・・
 
 事件そのものは前半に発生し、後半は、裁判の経過とともに過去の事件の背景が明らかにされる。
 登場人物のつながりも判明し、読者の思惑をひっくり返しながら、物語はエンディングへ。
 
 裁判で無罪を勝ち取ったあさぎは故郷の長野へ帰る。法律事務所の助手の瑞穂がそこに訪れ、千曲川のほとりで言った言葉は・・・
 
 

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