2012年11月29日木曜日

機龍警察が暗黒市場に乗り込むとき

「機龍警察 暗黒市場」
月村了衛

単行本: 416ページ
出版社: 早川書房
言語 日本語
ISBN-10: 4152093218
ISBN-13: 978-4152093219
発売日: 2012/9/21


元ロシア警官のユーリ・オズノフ警部は、警視庁特捜部との契約を解除され武器密売に手を染めた。そんな中特捜部は、近々ロシアマフィアによる有人搭乗兵器の見本市が行われることを察知するが……。
警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧友のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染めた。一方、市場に流出した新型機甲兵装が〈龍機兵〉(ドラグーン)の同型機ではないかとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した――日本とロシア、二つの国をつなぐ警察官の秘められた絆。リアルにしてスペクタクルな“至近未来”警察小説、世界水準を宣言する白熱と興奮の第3弾。

第一章  契約破棄 
 栃木で派出所襲撃事件が発生。はだしで交番に逃げ込んできた男が、追ってきたトラックから突き出された重機関銃で交番もろとも破壊させられる。文字通り破壊だ。その重機関銃は装甲兵装が握っていたという。男は実は警官で、密輸武器の捜査をおこなっていたことが判明する。
 一方、ユーリ・オズノフは警視庁との契約を破棄され、ソ連時代の昔なじみで、今はロシアン・マフィアの顔役になっているゾロトフに接近する。最初の取引の場所を訪れたユーリは、そこにいた台湾人だという男の素性を暴く、「そいつは警官だ」。潜入捜査官はそのまま引き連れられ、ユーリは仲間として認められる。
 警視庁では秘密裏に特捜部の会合が持たれる。有人搭乗兵器の見本市にロシアから新型兵器が出品されるというのだ。沖津警視正は当然のこと、姿警部補をはじめ、ライザや鈴石緑も参加する。そこで明かされた作戦に緑は驚愕した。ユーリは囮捜査のために敵に潜入したというのだ。
 
第二章  最も痩せた犬達 
 ユーリの少年時代。転校生としてやって来たゾロトフは、父が荒くれ者で、ゾロトフ自身も虐待を受けている。そして酒場であばれたゾロトフの父を逮捕したのがユーリの父だった。
 夏休みのある日、ユーリはゾロトフに連れられて、モスクワの廃墟を訪ねた。かつての秘密警察の拷問の形跡が残る地下室。ゾロトフはここが自分の別荘だとうそぶく。その夜、事件を起こしたゾロトフの父を、ユーリの父が射殺してしまう。
 ユーリは兵役が明けたあと、民警に就職、父と同じ道を進むことになる。先輩たちは父ともなじみで、影からユーリを応援してくれる。かれらこそ、イワンの最も痩せた犬達こと、誇り高い警官たちだった。
 ある日、先輩刑事の年の離れた妹と知り合い、ひそかに将来を語り合う仲になる。そんなとき、ユーリの前に刺青をしたゾロトフが現れる。
 運命はユーリを翻弄する。
 警察の上司の罠にはまったユーリは、母や婚約者、仲間の警官たちのすべてを失いゾロトフの庇護を求めることになる。逃れて落ち行く先はアジアの辺境。機甲兵装をまとい、ギャングたちの護衛に身を持ち崩していたユーリの前に現れたのは、警視庁の沖津だった。沖津はユーリに、モスクワ時代の罪を帳消しにするから、あらためて日本の警察で働けという。
 
第三章  悪徳の市 
 ユーリとゾロトフは密輸武器の競売に参加するために日本へ。そこには、ロシアの武器密輸業者の大物や中国のチャイニーズマフィアも加わり、新型機甲兵装の見本市が開かれる。

 新宿のホテルに集まり、那須高原の保養施設に移動するころには、参加者の数も徐々に減っていく。警察の追跡をかわすための組織の仕掛けだった。ギャングたちは入札がおこなわれる仙台のカジノへ向かう。 そこでユーリの実態に気付いたマフィアは、新型機と対決する装甲兵装のオペレーターにユーリを担当させ、見本の性能をアピールすると同時に邪魔者を消そうとする。
 東京から遠く離れた宮城県のホテルの場所を連絡する手立てもなく、ユーリは機兵同士の戦いに臨むことになったが・・・
 
 ということで、身の丈3メートルの機甲兵装に身を包み、知力と体力を尽くして男や女たちが暴れまわる第3弾。
 第1作はこちら「機龍警察」。沖津の暗躍が近未来の日本警察を変えていく。
 第2作はライザが白い死神となって活躍する「自爆条項」。
 今回最後の大舞台が宮城県に設定され、震災後の復旧が進まないまま、不良外人の巣窟と化したカジノ都市のホテルが描かれる。そこでおこなわれる武器密輸の暗黒市場。マフィアやギャングたちが目の色を変えて欲しがる武器とは、やはり新型の機甲兵装だった。それはドラグーンと呼ばれる警視庁の龍機兵を上回る性能を持つのだろうか。


 だが、やはり主役は元ロシア警察の痩せ犬ユーリ・オズノフ。かれの生い立ちと、任務にひたすら忠実な彼の内なる葛藤が、はがゆいばかりのハードボイルドになっている。

 そして、新型機との対決で見せたユーリの意地と根性。痩せ犬は痩せ犬でも、誇りある痩せ犬の姿に感動しよう。 さて、次巻はいよいよ姿警部補の物語になる、のかな?
 

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