2013年1月5日土曜日

アイ・コレクターは逆転に向かって進む

「アイ・コレクター」
セバスチャン・フィツェック
小津 薫 (翻訳)

新書: 405ページ
出版社: 早川書房
言語 日本語
ISBN-10: 4150018588
ISBN-13: 978-4150018580
発売日: 2012/4/6

ベルリンを震撼させる連続殺人事件。その手口は共通していた。子供を誘拐して母親を殺し、設定した制限時間内に父親が探し出せなければその子供を殺す、というものだ。殺された子供が左目を抉り取られていたことから、犯人は“目の収集人”と呼ばれた。元ベルリン警察の交渉人で、今は新聞記者として活躍するツォルバッハは事件を追うが、犯人の罠にはまり、容疑者にされてしまう。特異な能力を持つ盲目の女性の協力を得て調査を進める彼の前に、やがて想像を絶する真相が! エピローグから始まる奇抜な構成、予測不能の展開。『治療島』の著者が放つ衝撃作。

 ふむふむ、と思うでしょう。
 405ページから始まり、404,403・・・と減っていく。
 エピローグのアレクサンダー・ツォルバッハ(わたし) からはじまり、最終章・結末、続いて第83章、82章と減っていく。ラストは序章・始まりなのだ。
 ただ、それは単なる章だてで、ストーリーは時系列にそって進んで行く。
 それが判明するまで逆にへんなこだわりを持ってしまって、ストーリーに入り込むまで時間がかかった。
 
 冒頭の「エピローグ」では刑事時代のツォルバッハが、誘拐された子供を救うため犯人を射殺せざるを得なかった経過が描かれる。そして今、記者となり、警察の情報を違法傍受しつつ、警察とは別に犯人追跡を続けている。
 ツォルバッハは妻との離婚調停をかかえながら、「目の収集人」追跡を続ける。犯人は子供を誘拐し、何処かに隠している。その子の母親を殺し、母親の死体が見つかると同時にカウントダウンを始める時計を残して行く。その時計が45時間を刻むと子供が殺される時間になる。
 そして、今回、収集人が4度目のゲームを始めたという情報が届く。
 なおかつ、息子のユリアンの行方がわからない、と妻からの電話。
 
 そんなツォルバッハの前に謎の女性が登場する。盲目の物理療法士だというアリーナだ。彼女は犯人を見たという。見たというより、彼女と接触したときに、犯人の記憶を見ることができたという。彼女とともに捜査を進めるが、その情報があまりに真実に近いがために、警察から犯人だと疑われることに・・・
 ツォルバッハは新聞社の実習生フランクの助けを借りながら、警察の裏をかいて犯人の足跡、誘拐された子供のありかを探索していく。
 
 張り巡らされた罠。まるで映画の「ソウ」シリーズみたいだ。 
 ツォルバッハの母を介護していた看護士を巻き込んだりして、犯人の意図が、いよいよツォルバッハの悪意を暴き出そうとしているように見える。
 間に挿入される、誘拐された子供の、脱出への試み。
 それがサスペンスを盛り上げる。
  
 フィチェックの作品は初期のころから読んではきたが、このブログでは初めてかな。
 暗い結末で、評価は分かれるところだが、すんなり読めるところはお勧め。
 

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