2013年5月22日水曜日

1922は私が転落することになった年

「1922」
スティーヴン キング (著)
横山 啓明 (翻訳)
中川 聖 (翻訳)

文庫: 308ページ
出版社: 文藝春秋 (2013/1/4)
言語 日本語
ISBN-10: 4167812142
ISBN-13: 978-4167812140
発売日: 2013/1/4

恐怖の帝王キングの最新作品集!
かつて妻を殺害した男を徐々に追いつめる狂気。友人の不幸を悪魔に願った男が得たものとは。巨匠が描く、真っ黒な恐怖の物語を2編。

8年前、私は息子とともに妻を殺し、古井戸に捨てた。殺すことに迷いはなかった。しかし私と息子は、これをきっかけに底なしの破滅へと落下しはじめたのだ…罪悪のもたらす魂の地獄!恐怖の帝王がパワフルな筆致で圧倒する荒涼たる犯罪小説「1922」と、黒いユーモア満載の「公正な取引」を収録。巨匠の最新作品集。
 
<1922>
 1922年、私は妻を殺した。14歳だった息子のヘンリーも心ならず共犯となった。
 その後の転落が語られる。
 ヘンリーは同級生のシャノンを妊娠させ、家のトラックを盗み、ふたりで駆け落ちしてしまう。
 殺した妻を井戸に放り込み、その上に、飼っていた牛を放り込み、山から持ってきた土で井戸を埋めた。だが、その井戸からあらわれたネズミが私に復讐を始めた。
 ヘンリーは遠くの街で強盗として新聞種になる。シャノンと共に小売店や銀行を襲撃するふたりは「恋する強盗」として有名になっていく。ボニーとクライドみたいだ。
 ネズミは私の指に噛み付き、治療するのが遅れた私は左手首から先を切り落とすことになった。
 恋する強盗だったはずのヘンリーたちは、はずみで人を殺してしまい、殺人犯として追われることになった。そしてあるとき、店番に撃たれたシャノンはお腹の中の子供と共に死んでしまう。それをはかなんだヘンリーは自ら頭を打ち抜き自殺してしまった。
 数日後に発見されたヘンリーはネズミに頭を食い破られ、おぞましい姿になっていた。
 やがて私は農場を売り払い、街に住まうことになった。
 だが、ネズミたちは私に付きまとっている。8年後の今も、ドアの外に、妻と、妻が率いるネズミたちが、私がドアを開けるのを待っている。さあ、入ってこい
 
<公正な取引>
 癌にかかったデヴィッド・ストリーターは街の路地裏で不思議な男エルビッド(ELVID)と取引をする。
 「延長」してやるから、15年間、収入の15%の利益を寄越せ。
 やがてストリーターの身体から癌が消滅、息子のジェイクはITゲーム業界で名を売る。娘のメイは作家として独り立ち。ストリーターの商売は順調。順風満帆な人生が開けてきた。
 そのかわり、友人のトム・グッドヒューの一家が悲惨な目にあう。息子が心臓発作でなくなり、娘は歯槽膿漏で歯をすべてうしなう。妻は癌で死亡。本人はアルコール依存症だ。
 だが、デヴィッドは地方紙に記事を書き始めた妻にこういう。「人生は公平なんだ。サイコロゲームのクラップスで7の目を出し続ける人もいれば、2ばかり出し続ける人もいる」
 喜劇か悲劇か、自分でも気付いていない自分残酷さを気付かせる一作。

  

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