2013年8月14日水曜日

聖なる怠け者の冒険が暴き出す京都の真の姿とは

「聖なる怠け者の冒険」
森見登美彦

単行本: 344ページ
出版社: 朝日新聞出版
言語 日本語
ISBN-10: 4022507861
ISBN-13: 978-4022507860
発売日: 2013/5/21

「何もしない、動かない」ことをモットーとする社会人2年目の小和田君。
ある朝目覚めると小学校の校庭に縛られていて、隣には狸の仮面をかぶった「ぽんぽこ仮面」なる怪人がいる。
しかも、そのぽんぽこ仮面から「跡を継げ」と言われるのだが……
ここから小和田君の果てしなく長く、奇想天外な一日がはじまる。

朝日新聞夕刊連載を全面改稿、森見登美彦作家生活10年目にして、3年ぶりの長篇小説。
新聞連載の挿画をまとめ、森見登美彦氏のコメントもついた画集『聖なる怠け者の冒険挿絵集』(フジモトマサル著)も同時刊行。
二冊まとめてどうぞ。
内容(「BOOK」データベースより)
一年ほど前からそいつは京都の街に現れた。虫喰い穴のあいた旧制高校のマントに身を包み、かわいい狸のお面をつけ、困っている人々を次々と助ける、その名は「ぽんぽこ仮面」。彼が跡継ぎに目をつけたのが、仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」を改訂して夜更かしをすることが唯一の趣味である、社会人二年目の小和田君。当然、小和田君は必死に断るのだが…。宵山で賑やかな京都を舞台に、ここから果てしなく長い冒険が始まる。

 主人公は小和田(こわだ)君。ということになっているんだけど、どうかな。
 じつは京都の町そのものが主人公。それも祇園祭宵山の日の、朝から夜の京都だ。

 馴染みのある地名や店名が次々に出てくる。
 早朝のイノダコーヒでは地元店主たちが「ぽんぽこ仮面」のうわさで騒がしい。
 「さあ、土曜日が始まる!」 という宣言のもとに長い長い一日が始まるのだが、そのスタートは「スマート珈琲店」でいただく、朝のコーヒーとサンドイッチ。
 コーヒーを飲んでいるのは小和田君が勤務する会社の所長さん。後藤所長はスキンヘッドも輝かしいこわもてだが、このたび東京へ転勤することになって、昨夜は送別会で遅くまで飲んでいたのに、朝のローテである、スマート珈琲店でのコーヒーはかかせない。

 そこに合流するのが、小和田君の先輩である恩田先輩と、その彼女の桃木さん。土曜日のスケジュールをびっしりと手帳に書き込み、そのとおりに行動することに価値を見いだしている。

 そんな人たちを遠巻きに監視しているのは週末探偵の玉川さん。探偵事務所長の浦本から命じられた、ぽんぽこ仮面の確保のために情報採取しているのだ。
 というのも、つい先ほど、ぽんぽこ仮面に出会って、その2代目に推挙された小和田君を尾行してきて、このスマート珈琲店までやってきたのだ。

 こうして、宵山の朝が始まる。
 ころがらない石になって、もっと苔をつけてやはらかくなってやる、と意気込む(?)小和田君。
 ぽんぽこ仮面を捕らえようとする勢力。そこにひそむ陰謀とは。
 密造酒のテングブラン流通機構でうごめく面々。
 めんといえば、無間蕎麦の催しに集う人々もすさまじい。
 他人の不幸を肴にして酒を喰らうという日本沈殿党の学生たち。

 北白川ラジウム温泉なんてのも出て来る。やはり京大卒の筆者らしい地元の濃密さかな。

 そして、宵山のまちを遊泳する赤い浴衣の少女たち。
 謎の狸山からつながっている、異次元の古都で出会う螺旋状の旦那衆の集まり。土曜倶楽部、日曜倶楽部、そしてまた月曜倶楽部につながり、火曜、水曜・・・と階梯をのぼるのだが、ふたたび土曜倶楽部に辿り着いたときには、それはまた一段高度になった倶楽部なのだった。
 その無限のつながりがねらっている京都の、その真の姿とは・・・

さいごにおまけ。
これがぽんぽこ仮面だ!
 

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