2013年8月24日土曜日

ビッグ・ドライバーがもたらした恐怖に復讐を

「ビッグ・ドライバー」
スティーヴン キング (著)
高橋 恭美子 (翻訳),
風間 賢二 (翻訳)

文庫: 364ページ
出版社: 文藝春秋
言語 日本語, 日本語
ISBN-10: 4167812185
ISBN-13: 978-4167812188
発売日: 2013/4/10

息つくひま一瞬もなし! 巨匠の最新作品集
突然の凶行に襲われた女性作家の凄絶な復讐――表題作と、長年連れ添った夫が殺人鬼だと知った女性の恐怖を描く中編を収録。
内容(「BOOK」データベースより)
小さな町での講演会に出た帰り、テスは山道で暴漢に拉致された。暴行の末に殺害されかかるも、何とか生還を果たしたテスは、この傷を癒すには復讐しかないと決意し…表題作と、夫が殺人鬼であったと知った女の恐怖の日々を濃密に描く「素晴らしき結婚生活」を収録。圧倒的筆力で容赦ない恐怖を描き切った最新作品集。

「ビッグ・ドライバー」
 作家のテスは田舎町の図書館から講演会の依頼を受ける。
 講演会が終了後、図書館長の女性から近道を教えられるが、その道でクルマがパンクしてしまう。
 それが罠だった。
 大柄な男が現れ、パンクの修理を手伝うといいながら、突然殴り掛かる。
 気絶したテスはレイプされ、傷だらけになっている自分に気がつく。だが、男はテスが死んだと思い、パイプに押し込める。そこには無残な死骸が何体もころがっており・・・
 どうやら男は殺人鬼なのかもしれない。
 死体置き場から逃げ出したテスは苦労して我が家に帰る。
 そして復讐するための手だてを考え始める。
 ひょっとしたら、図書館の館長は男の知り合いなのかもしれない、と思い立ったのが手始め。
 飼い猫と会話し、カーナビに次善の策を教えられ、テスは、こんな悪人は生かしておけない、と考える。
 そこから話は一直線に進む。
 隠していたリボルバーを出してくる。ジョディ・フォスターの演じる、女復讐者の映画を見て、自分の行動を正当化していくのだ。

「素晴らしき結婚生活」
 ダーシーはガレージで異様な物を見つけてしまう。 
 夫のボブが秘かに隠していた、殺人現場らしい写真。ある女性名義の献血カード、図書館カード、そして運転免許証だ。こんなものが何故ここにあるの?
 その女性の名はつい最近ニュースで聞いたことがある。
 峡谷で発見された絞殺死体がその女だったということをネットで確認する。夫の出張記録と過去の殺人事件の記録を照合すると、確かに連続殺人事件とつながりがあることがわかってしまう。
 夫は殺人犯なのか?
 ダーシーの電話から不審な気配を察した夫は出張先から慌てて帰って来る。
 だが、夫自身にそれを訊くことはできない。
 それを察知したことを知られてはならないのだ。
 夫はさりげなく振る舞う。その態度が余計に気になる。ダーシーも今までと変わりなく夫に応対する。互いに知らぬ振りを装う夫婦。
 ある夜、酔っぱらった夫に向かってダーシーは・・・

 という2篇。
 どちらも、犯罪者に対する処罰をおこなう女性の話。自分をレイプして殺そうとした男と、男に加担していた家族たちに対する報復。自分の夫が殺人者だったと知ってしまった妻が、人知れずその事実を葬るために取った行動。
 いずれもその行動が正当化される、というのではないが、やむを得なかったという結果で、その行為に対する賛助者も現れる。
 自分の身は自分で守る、やったことの責任は自分が取る、といった結末が、いかにもアメリカらしい2作品。

 

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