2013年11月22日金曜日

11/22/63の事件を11/22/13に読了

「11/22/63」(上・下)
スティーヴン・キング著
白石朗訳

  • 単行本: 529ページ、527ページ
  • 出版社: 文藝春秋
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4163824804、4163824901
  • ISBN-13: 978-4163824802、978-4163824901
  • 発売日: 2013/9/13

巨匠がまたもや代表作を生み出してみせた!
過去へ旅することのできる「扉」の存在を知った男はケネディ暗殺阻止に挑む。キングにしか書けない壮大な物語。落涙保証の感動大作!
内容(「BOOK」データベースより)
小さな町の食堂、その倉庫の奥の「穴」。その先にあるのは50年以上も過去の世界、1958年9月19日。このタイムトンネルをつかえば、1963年11月22日に起きた「あの悲劇」を止められるかもしれない…ケネディ暗殺を阻止するためぼくは過去への旅に出る。世界最高のストーリーテラーが新たに放った最高傑作。

 ことの始まりは、ぼくの生徒が書いた作文だった。
 もっとも、これは成人教室で、書くこともままならず大人になった人たちのスクールだ。
 英語教師のぼくのもとに提出されたレポートには、今は校務員として働いている男の少年時代に起こった悲劇が書かれていた。母と別れた父が狂気にかられ、その年のハロウィンの夜、母と兄と妹を撲殺し、その男の片足を使えなくさせたのだ。
 たどたどしいそのレポートは州の賞を取り、男は有名人になる。

 その校務員と並んで写した写真を飾っていたのが、近くの食堂の主人。
 主人は、そのレポートに感動していた。

 そして食堂の主人はある秘密を教える。
 倉庫の地下室に下りていく階段を通ると、過去に通じるているのだという。そこは1958年の9月19日。そこで幾日かを過ごして帰って来ると、向こうでいくら時間をつかっても、下りていったときから、2分後に戻ってくるのだ。

 ぼくは半信半疑だったが、それなら、校務員の悲劇を救うことが出来るのではないか、と考えてしまった。
 ぼくは思わず、階段を下りていく。そこは事件が起こるハロウィンの2ヶ月前の世界。

 到着した9月末からひと月後のハロウィンの夜、別れた父が母を襲いに来る。それを防ぎに来た僕は、将来、ぼくの教え子になる校務員の少年を救い出す。
 2010年に戻ったぼくは、食堂の写真がなくなっていることに安堵する。
 そして、改変された過去を調べてみる。当時の新聞では、謎の男として、ぼくのことを捜索している記事が残っていた。
 だが、校務員となっていたはずの男はベトナム戦争で戦死していた。

 歴史改編が現在になにをもたらすか。
 キングは、歴史がリセットされる、ということから始める。
 時間旅行者が過去に舞い戻ると、その時点で、すべては旅行者の過去にリセットされる。
 そこからすべてが始まるのだ。

 ある日、食堂の主人は突然やせ衰えていた。
 それも肺がんになり、余命わずかだと自分で告げる。
 そして、自分が4年に渡って調査してきた結果をぼくに告げ、ひとつの願いを依頼してくる。
 それは11/22/63に起こった事件を防いでくれという願いだった。

 1963年11月22日、テキサス州ダラス。
 ケネディ暗殺を阻止しようと、4年間を過去の世界で過ごしてきたが、体力ももたないので帰って来た。それをぼくにもう一度完遂してほしいというのだ。

 もう一度1958年に戻ったぼくは、リセットされた過去の中で、改めてその校務員の少年時代を救うことになる。今度はうまくやる。そう思いながらも、歴史の流れがダイナミックに、改編を許そうとしない動きをしてくる。

 やがて、英語教師としてハイスクールに勤め、アメフトの選手を主役にして演劇公演を成功に導く。
 そして、図書館の新任司書セイディ—が登場。
 彼女とは心を許せる仲になるのだが、ある日、うかつなことに、ぼくはローリングストーンズの歌を唄ってはしゃいでしまった。それは7年後に発表される楽曲だったのだ。

 これもジムラの呪いなのか?

 ここまで上巻。

 下巻ではいよいよ、標的であるオズワルドとの駆け引きが始まる。
 そしてセイディーも昔結婚していた男と別れるべく努力するのだが、変態男はなかなか離婚に応じてくれず、つきまとってくる。

 オズワルドの周辺をおさえ、事件が起こるであろうときに備えるための対策が出来てきたとき、事件が起こる。

 これも歴史改変への警告なのかもしれない。
 セイディーが別れた夫に襲われ、ほほを切り裂かれてしまったのだ。
 治療費を稼ぐために、ギャングのノミ屋とボクシング試合の賭けをして、まんまと大金を手にすることに成功。

 だが、ギャングはそんなぼくを徹底的に叩きのめす。
 ぼくは一時的に記憶を失い、何のためにダラスに行こうとしたのかさえ思い出せない。
 セイディーはぼくを助けるために、ともにダラスへ赴く。

 そしてダラスで起こったこと、
 ケネディは助かるのか、
 そして歴史はどう変わっていくのか・・・

 物語の結末はどうあれ、読後の爽快さはいつもながらのキング節だ。

 キング自身のあとがきでは、暗殺時のフィルムを見ていてわかるとおり、ケネディは後方の高い場所からではなくて、前方から撃たれている、と断言している。
 そのフィルムは事件後10年もたってから発表されているのだ。

 歴史の闇は何を飲み込んでいるのだろう。
 たまたま、読了したのは11月22日だった。
 

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