2011年1月16日日曜日

隻眼の少女の謎と、本格ミステリの頂点の謎

「隻眼の少女」
麻耶 雄嵩

単行本: 420ページ
出版社: 文藝春秋
ISBN-10: 416329600X
ISBN-13: 978-4163296005
発売日: 2010/09/30

 死に場所を求めて信州の小さな温泉宿をおとずれた大学生の種田静馬。そこで遭遇したのは凄惨な首切り殺人事件。しかも被害者はまだ15歳の少女。
 被害者の首が置かれていた場所をさかんに訪れていた静馬は容疑者と疑われる。それを助けてくれたのが水干姿の美少女探偵・御陵みかげ。

 2011年文春ベスト、このミス、ともに4位。本格ミステリベストでは、めでたく1位にランクされている。
 本格ミステリということで、人里はなれた寒村、首切り連続殺人、怪しげな旧家の人々、三つ子の姉妹と、舞台装置は万全。
 探偵役は占いを生業とする隻眼の美少女、ワトソン役はその助手にやとわれた大学生。
 当然のように起こる連続殺人、見透かしたようなせりふを吐きながら事件を防げない探偵たち。これもお決まりか。

 淡々と事態が進行するのだが、被害者の家族、姉妹たちの嘆き、悲しみなどが伝わってこない。

 そして危うくミステリーのルール違反になりそうな設定。
 探偵が探偵されていく、その中でひっくり返される真実。


 じじいとしては、もっとおどろおどろしい展開を期待するのだが、登場人物たちはその役目を淡々と引き受け、事態を冷静に受けいれる。
 ミステリの設定としてはフェアではないのではないか、という疑問も残るが、ロジックとしてこれが成り立つところに今の本格ミステリの面白いところがある。
 
 本格ミステリの頂点を知るには最適な一冊。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿

爺の読書録