乾ルカ著
単行本: 251ページ
出版社: 角川春樹事務所
ISBN-10: 4758411654
ISBN-13: 978-4758411653
発売日: 2010/10/28
序章。平成19年、ひとりの女性が山奥のへんぴな村を訪ねていく。
道を尋ねた人たちは、なぜあんな村へいくのかと不思議がるか、あるいは、その村はどこにあるのかと逆に聞くかのどちらかだった。
ただひとり、ふもとの旅館の女将だけは、それなら朝ご飯をしっかり食べていけと励ましてくれた。
ホラー小説と位置づけられている。
基本はホラーだ。おぞましいシーンも続出する。
何故こんなことが、と思いながら物語を追い続けるしかない。
第一部は突然、天正3年、1575年の姫君たちの脱出行が描かれる。
美津姫と五郎太が山深い里で疫病に襲われ命の瀬戸際に立たされるのだ。そのときにお美津のとった行動は・・・
次の章では昭和36年に時代が飛ぶ。昆虫学者と女医の夫婦が、その村を訪ねて行く。
夫は、昨年訪れて道に迷ったあげくたどり着いたこの村でたまたま出会った、新種と思われる蟻の研究をするために。女医の妻は無医村への情熱を胸に秘めての到着だった。
だが、この村には病気の村人は存在しないようなのだ。病人は秘かに始末されるのではないか、どこかに閉じ込められているのではないのか。
現に昨夜まで高熱で苦しんでいた子供が、次の朝健康そのもので朝食をとっているのを目撃する。昨夜は丘の上の神社にこもっていたようだ。
妻のお腹に子供が宿ったことに気付いたある夜、夫が帰ってこなくなる。病人らしき不思議な村人の後を追って、神社へ行ったのかもしれない。
昭和47年、昭和52年、と時代が進むと、ひとりで娘を育てる女医の受難と、村の主・蜜姫に見守られて成長する娘が牧歌的なムードで描かれる。
やがて成長した娘の、村からの脱出劇は悲劇的だ。
結末、冒頭の女医が、訪れた村で明かす決意が意外だ、というような書評が某Y新聞に発表されていたが、そうでもないと思うよ。必然的な流れで、これは納得できる結末だ。
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