里見蘭
単行本: 250ページ
出版社: 新潮社
ISBN-10: 4103130121
ISBN-13: 978-4103130123
発売日: 2010/10/20
ひきこもり青年・雅祥(まさよし・まあくん)の子育て奮戦記。
といえば、なんじゃいな、と思われるだろう。だが、これがミステリー色ゆたかな、サスペンスたっぷりの物語になっている。
あまり馴染みのない著者だが、ファンタジーノベル大賞を受賞しているということで、それはそれで安心して読み始める。
ユーモア小説ともいえるし、謎が謎を呼ぶ展開のジェットコースターノヴェル、結末にはあっと驚く仕掛けがあるミステリー。
母の死がショックで自殺未遂をおかして、ひきこもりに拍車がかかる。そして4年。
父親が突然、赤ちゃんを連れて帰ってくる。知り合いの赤ちゃんをしばらく預かるといって、喜々として世話をし始めるのだ。
だが、その父が急死、赤ちゃんを預けるにしても、役所や警察は相手にしてくれない。
赤ちゃんの世話など21歳の独身男子には無理だ。助けを求めて外へ出るのことも出来ないのが引きこもりなのだから。
おむつの世話、ミルクの調合、泣きじゃくるときの対処の仕方、すべて手探り。
従姉のしーちゃんに訳をはなして協力してもらうが、次から次に難題がふりかかる。
並行して赤ちゃんと関連していると思われるエピソードが語られる。
美佐の不倫とその娘である成美の幼い恋。
しーちゃんの不妊治療。
それぞれに関わる婦人科医の思い。
それぞれに関わる婦人科医の思い。
そして、父が保証人になっていたという事実から、自分の生活が脅かされることになり・・・
だが、圧巻は可愛いベイビーのはちゃめちゃぶりと、まあくんその人の成長だろう。
引きこもりの男子が赤ちゃんのために一念発起、助けを求めて震えながら町へ出て行く。
読者はまあくんに感情移入しながら、応援し、ベイビーの暴れん坊ぶりに快哉することになる。
子育てのハウツーものとまでは言わないが、ほんわかミステリーとして、赤ちゃんがいた頃が懐かしくなる傑作エンターテインメント。
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