2011年12月26日月曜日

機龍警察、その成り立ちを追うために

「機龍警察」
月村 了衛 

文庫: 351ページ
出版社: 早川書房
ISBN-10: 4150309930
ISBN-13: 978-4150309930
発売日: 2010/3/19

大量破壊兵器の衰退に伴い台頭した近接戦闘兵器体系・機甲兵装。『龍機兵(ドラグーン)』と呼ばれる新型機を導入した警視庁特捜部は、その搭乗要員として姿俊之ら3人の傭兵と契約した。閉鎖的な警察組織内に大きな軋轢をもたらした彼らは、密造機甲兵装による立て籠もり事件の現場で、SATと激しく対立する。だが、事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた……“至近未来警察小説を描く実力派脚本家の小説家デビュー作!

 ことしの9月に出た「機龍警察 自爆条項」が評判で、2012版「このミス」で同率9位にランクイン。そこで、昨年春の第一作から読んでみようということで。
 タイトルと紹介文からはなんのことやら、よくわからない。というより、なんかガンダムみたいな話かな、今なら日曜日朝のお子様向け変身アクションの巨大ヒーローものだろうか、と思われるかも。

 SIPD。警視庁特捜部・ポリス・ドラグーン。龍機兵と呼ばれる。全長3メートルにもおよぶ、装甲兵装だ。
 その中に警官が乗り込み、操縦する。両足を突っ込み、両手をロック、そして体全体をカバーすると、装甲の「龍骨(キール)」と人体の脊椎に埋め込まれた「龍髭(ウィスカー)」が量子結合でシンクロし、人間離れしたパワーと運動能力を発揮することになる。

 乗り込むのは訳ありの3人。
 姿俊之警部専用龍機兵・コードネーム「フィアボルグ」。ダーク・カーキで彩色。日本人でありながら傭兵として東ティモールで働き、ここで中国籍の二人の兄弟に出会い、それが今回の事件と重なり合うことに。
 ユーリ・M・オズノフ警部が搭乗するのは「バーゲスト」。全身黒。ユーリは元モスクワ民警。
 「バンシー」と名付けられた真っ白な機体に搭乗するのはライザ・ラードナー。元IRAの死の天使、元テロリストだ。機体そのものの名前もアイルランド伝承に登場する<死を告げる女精霊>のことだ。

 かれらを指揮するのは警視庁特捜部の沖津旬一郎警視長。ただ、身分以上の権力と野望を秘めている。
 そして、機体のメンテナンスをおこない、生体モニターで3人を監視する鈴石緑主任。

 発端は龍機兵をコピーした機甲兵装「キモノ」で武装した3人のテロリストが地下鉄駅を占拠する事件。その犯人らしき人物に心当たりがあった姿警部補は、彼らの行動パターンから「キサンガ渓谷急襲作戦」を思い出す。しかし、すでに遅く、バーゲストのユーリ警部補が犠牲になってしまう。ユーリは重傷、機体は補修を余儀なくされる。

 姿警部補は中国籍の密輸業者フォン・コーポレーションを捜査するうちに、テロリストに拉致されてしまう。そこで、姿がとった手段は・・・

 ラスト、千葉の倉庫で対決するテロリストと龍機兵3体。とくにライザの活躍には呆然とする。その結末は、しかし結末とはならず、次に向かうべき敵を示唆する。それは警視庁内部、警察機構そのものを標的とすることになるのだ。
 

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