2012年5月23日水曜日

くちびるに歌を、心には太陽、手には花束を

「くちびるに歌を」
中田永一

単行本: 285ページ
出版社: 小学館 (2011/11/24)
言語 日本語
ISBN-10: 4093863172
ISBN-13: 978-4093863179
発売日: 2011/11/24


書店員さん大注目作家・中田永一最新作!
長崎県五島列島のある中学合唱部が物語の舞台。合唱部顧問の松山先生は産休に入るため、中学時代の同級生で東京の音大に進んだ、元神童で自称ニートの美しすぎる臨時教員・柏木に、1年間の期限付きで合唱部の指導を依頼する。
 それまでは、女子合唱部員しかいなかったが、美人の柏木先生に魅せられ、男子生徒が多数入部。ほどなくして練習にまじめに打ち込まない男子部員と女子部員の対立が激化する。夏のNコン(NHK全国学校音楽コンクール)県大会出場に向け、女子は、これまで通りの女子のみでのエントリーを強く望んだが、柏木先生は、男子との混声での出場を決めてしまう。
 一方で、柏木先生は、Nコンの課題曲「手紙~拝啓 十五の君へ~」にちなみ、十五年後の自分に向けて手紙を書くよう、部員たちに宿題を課していた。提出は義務づけていなかったこともあり、彼らの書いた手紙には、誰にもいえない、等身大の秘密が綴られていた--。
<編集者からのおすすめ情報>
すでに多数の作品を出されているある有名作家の別名義・中田永一氏の最新作になります。中田氏は、08年に「百瀬、こっちを向いて」で、単行本デビューし、各紙誌の年間ベストテンでランキングするなど高い評価を得ています。

 長崎県五島列島にある中学校。

 産休にはいったコーラス部の顧問。
 代用教員にやってきたのは絶世の美女。さきの顧問とは中学時代から友人だった。また、顧問の旦那とはなにかいきさつがあったようだ。
 代用教員目当てに入部して来る男子たち。
 コーラス部は分裂寸前だ。


 ふたりの中学生が交互に語る、合唱部の県大会出場のいきさつ。

 私は仲村ナズナ。母の死後、父は愛人を作って家出して、いまは祖父や祖母と暮らしている。その秘密を知っている幼なじみの向井ケイスケは、小学生のときにあげたラブレターをまだ持っているらしく、合唱団のメンバーにそれを知られたら大変なことになる。ところが、ケイスケはある女子が気になっているみたいで・・・

 僕は桑原サトル。小さいころから「ぼっち」の天才。影がうすく、存在感がないそうで、ひとりぼっちには慣れているというか、あえてひとりでいることを選んで来た。というのも、兄が自閉症で、その秘密を知られないために、人との付き合いをさけてきたのだ。だが、長谷川カオルの不思議な言動に惑わされているうちに、彼女が神木先輩と付き合っているという噂が聞こえてきた・・・

 ほかにも、指揮者の辻エリ、柔道部にも所属している三田村リクなど、彼らの活躍をみると、若さとはやっぱり素晴らしいと、爺は思ってしまうのだ。

 小道具としてのサクマ式ドロップ(途中に式がはいるのは知らなかった)も、結末で目を見張る活躍を遂げる。
 なにより、ナズナとサトルの兄とのつながりが、結末に至って判明する。ここは涙なしには語れないエピソードだ。
  
 中学生が合唱コンクールでアンジェラ・アキの曲を歌うために乗り越えていく障害の数々。
 アンジェラ・アキが好きな方、中学生の頃をいまだわすれていない方、なによりコーラスが好きなひとには是非とも読んでいただきたい一冊。

 

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