2013年4月13日土曜日

痛みがもたらす新たな警察小説

「痛み」
貫井 徳郎:福田 和代:誉田 哲也 (著)


単行本(ソフトカバー): 216ページ
出版社: 双葉社
ISBN-10: 457523771X
ISBN-13: 978-4575237719
発売日: 2012/5/16


現在最も注目を集める気鋭の作家による警察小説アンソロジー。犯罪と量刑のありかたを問う「見ざる、書かざる、言わざる ハーシュソサエティ」(貫井徳郎)、警視庁保安課刑事と通訳捜査官の活躍を描く「シザーズ」(福田和代)、留置場で何が起きたのか「三十九番」(誉田哲也)の圧倒的に面白い短・中編を凝縮してお届け!
内容(「BOOK」データベースより)
『見ざる、書かざる、言わざる ハーシュソサエティ』―目と手と舌を奪われたデザイナー。裁判員制度と厳罰化。社会情勢が生み出した“狡猾な犯罪”の正体とは? 
『シザーズ』―刑事と通訳捜査官、俺が捕まえあいつが落とす。中国人の犯罪組織に、まるでハサミの刃のように、二人揃って鋭く切り込む!
『三十九番』―このまま、時は平穏に過ぎていくはずだった。「三十九番」の名を再び聞くまでは。留置係員は何を見たのか。衝撃のラスト。警察小説の新たな大地を切り開く3編。

『見ざる、書かざる、言わざる  ハーシュソサエティ』貫井 徳郎
 これは「痛い」ぞ。被害者は野明慎也、服飾デザイナー。目をつぶされ、両手の指すべてを切り取られ、なおかつ舌を切り取られているところを発見される。
 妻の千佳はそれでも、夫から情報をひきだす。見えないまま、画板に文字を書かせるのだ。
 刑事の吉川。まだ若手だ。幼い姪が変質者に殺されたという怒りを胸に秘め、捜査に当たる。変質者は罪に問われなかった。
 日本にはいまだに死刑制度が残っており、世界から野蛮な国だと思われているようだが、人ひとりを殺しただけでは死刑にならない。ましてや、今回の犯人も殺人罪に問われることはないだろう。
 近藤は50代の本庁の刑事。被害者がしゃべれないのはともかく、見えない、描けないでは、デザイナーの仕事は出来るわけがない。殺されたほうがましだ、とまでつぶやく。
 刑事たちが目をつけたのは田辺という野明の部下。そこまでして野明を痛めつける理由とは。

『シザーズ』福田 和代
 上月千里。警視庁の保安課刑事。警察の寮に妻と住んでいる。
 城正臣。警視庁通訳センターに所属する通訳捜査官。ホノカという4歳の娘、凛子と二人暮らし。上月の隣の部屋だ。
 事件は単純な管理売春の捜査だった。そこから、芋づる式に偽ブランド品の倉庫らしきものが判明する。
 城は、S(捜査協力者)として、町のチンピラや在留外国人を手足のように使っている。
 そこに劉好(ハオ)の存在が浮かび上がる。
 ハサミの2本の刃のように、上月と城が組んだときの切れ味が素晴らしい、と妻が評する。
 相棒ものとして、今後も続きそうな予感?

『三十九番』誉田 哲也
 小西逸男。留置担当官として過ごしてきたが、もはや定年も間近だ。
 留置所では拘置者は名前でなく番号で呼ばれる。
 さまざまな理由で留置されてくる人々。たまに長く、最長で23日間にわたって拘留される被疑者もいる。そんなひとりが加賀見だった。
 その加賀見の留置番号が三十九番だったのだ。
 生活安全課の川部が、その加賀見を出所後さがしていたのだが、最近見かけないと訴えて来る。
 小西には身に覚えがあった。小西は、非番の日を使って横浜に出向くが・・・

 短編を3篇あつめたアンソロジー。
 はやりのバディー(相棒)ものとも、少しちがう警察小説。
 痛みとタイトルしたのは、被害者の痛み、それぞれの主人公が身内にもつ痛み、さまざまな痛みだ。
 気になる作家3人がひらく、新たな警察小説。 

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