2013年4月9日火曜日

ジョン・マンがジョン・マンになる日


「ジョン・マン 望郷編」
山本 一力

単行本: 354ページ
出版社: 講談社
言語 日本語
ISBN-10: 4062181193
ISBN-13: 978-4062181198
発売日: 2012/12/21

いまはまだ帰れない。負けたらいかんぜよ!
山本一力が初めて挑む歴史大河小説 白熱の第3
郷土の先達、中浜万次郎ことジョン・マンの奇跡の生涯

Wow! ついに辿り着いたアメリカ本土、ニューベッドフォード港に、ジョン・マンの雄叫びが響き渡る。ハワイ、グアム、南氷洋、ブラジル。そして故郷の土佐・室戸沖では、津呂組の鯨獲りに遭遇。日本独自の鯨漁に乗組員たちが感嘆の声を上げる中、一人、万次郎は海を見つめ、唇を噛みしめる。
仲間が待っている。いまはまだ帰れない――
二年にわたる長き航海と、少年の成長。16歳になったジョン・マン、新天地での暮らしが始まる。

 波濤編、大洋編と続いてきた山本一力版・中浜万次郎伝、第3巻。
 ついにアメリカ本土に到着したジョン・マン。
 ニューベッドフォードの港で、船乗りたちが評判にするロイズの店。朝食に食べた目玉焼きのポテトに添えられたケチャップが思い出させたのは、ハワイでの出来事だった。
 
 ハナロロと呼ばれたホノルルでは、まだカメハメハ王国。
 入国に審査がある。万次郎はさきにジョン・ハウランド号で見せたシイラ獲りの技を披露して無事に入国許可を得る。
 そして仲間たちは漁師としてハワイにとどまることに。万次郎ひとり、仲間たち全員の琉球への渡航費用を稼ぐためにハウランド号に乗り込む。

 グアムはギューアン島と呼ばれている。
 船員たちの楽しみは上陸しての休暇。だが、上陸した水夫のうち、ハワイで雇った3人が逃亡するという事態が発生。船員たちに重苦しいムードが広がる。
 しかし、万次郎はグアムの風のなかに故郷の中ノ浜と同じ匂いを嗅いだ。

 そして捕鯨のためにハウランド号は室戸岬の沖合いにまで遠征する。
 そこでは、たまたま地元・土佐の津呂組の鯨獲りに遭遇。猟師たちの、尊厳に満ちた捕鯨の技にアメリカ人たちは感嘆する。万次郎も、いまなら故郷の漁師たちに助けてもらえると思うのだが、ハワイに残された仲間をおいて自分だけが助かる訳にはいかないと、あきらめる。
 
 だが、天候の不順でハウランド号はハワイを目前にして進路を変更、ふたたびグアムに向かう。グアムの地図店で世界地図と方位磁石を買い求めた万次郎は世界への思いを馳せるのだった。
 
 そして南氷洋。ハウランド号は南米大陸の最南端を迂回するコースを採る。
 そこでも捕鯨をして鯨油をたっぷり積み込み、故郷を目指すつもりだった。
 だが、万次郎と仲がよかった水夫のレイが氷の海に転落する事故が起こる。ハウランド号は急停止したが転落場所からはかなりの距離を進んでしまっている。万次郎はそのときの星座の位置を覚えており、凍り付いたレイを救出することに成功した。
 船長のホイットフィールドは万次郎の素質を見抜いた。

 今回、ハウランド号の故郷ニューベッドフォード入港から始まった物語は、鳥島から救出されて到着したハワイへの上陸、捕鯨をしながら、グアム、日本近海、南氷洋、ケープ・ホーンへの航海を、万次郎の回想として綴られて行く。
 そして合間には土佐の徳右衛門の動きが語られ、母の想い、故郷の漁師たちの今が明らかになる。

 万次郎は仲間の船乗りたちからも認められ、ジョン・マンの愛称を得ることになる。
 ジョン・マン誕生である。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿

爺の読書録