2013年4月2日火曜日

コブラは麻薬組織壊滅に向けてのマニュアルだ

 「コブラ」
:フレデリック・フォーサイス
:黒原 敏行

単行本: 245ページ
出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング
言語 日本語
ISBN-10: 4041102022
ISBN-13: 978-4041102022
発売日: 2012/12/1

コロンビアからもたらされるコカインの脅威に、米大統領は麻薬カルテル「エルマンダード」の壊滅を命じた。「コブラ」の異名を持つ有能かつ冷徹な元CIA工作員ポール・デヴローが立案した9か月計画とは?
麻薬はもはやテロと同じ国家的脅威と認めた米大統領の秘密指令で、かつての敵、アヴェンジャーことキャル・デクスターも仲間に加えたプロジェクト・コブラ。着実にカルテルを追いつめてゆく。作戦の行方は?
内容(「BOOK」データベースより)
少年のコカイン中毒死をきっかけに、米大統領は南米コロンビアから流入するコカイン産業の撲滅を決意した。白羽の矢が立ったのは、「コブラ」の異名を持つ元CIA局員、ポール・デヴロー。冷戦を戦い抜き、その後の対テロ戦争にも従事した男。大統領から白紙委任状を取りつけたコブラはまず、「復讐者」ことキャル・デクスターを仲間に加えた。ドン・ディエゴ・エステバン率いるコロンビアのコカイン・カルテル兄弟団を目標とする、「プロジェクト・コブラ」の作戦が幕を開けた! 国際謀略小説の巨匠が放つ、ノンストップ・テクノスリラー。

 「アベンジャー」「アフガンの男」と数年おきに読み継いでいるフォーサイス。
 今回は「アベンジャー」ことキャル・デクスターを配して、南米の麻薬カルテルを壊滅させようという作戦。
 前作、前々作はアフガンやアルカーイダ殲滅にかけるワンマンプレーの軍事行動だったが、今作で描かれるのはチームとしてのど派手な作戦。

 オバマ大統領をモデルにしたと思われる米大統領は、孫をコカインの過剰摂取で亡くした祖母の嘆きを耳にして、部下に、コカインについての報告を求める。
 その結果、大統領は、コカインにまつわる犯罪は国家の脅威として、すべてに優先してこれを撲滅せよと命令を下す。

 元CIA局員のコブラことデブローがこの任にあたる。アメリカ政府から20億ドルの資金提供を受けて実践に乗り出す。
 彼が選んだメンバーの第一はアベンジャーことデクスターだった。
 
 デクスターはまず、密輸ルートを絶つために必要な装備を準備する。
 穀物輸送船を改造した、兵員輸送船、これは麻薬運搬人たちを捕らえたときの護送船にもなる。
 輸送船には武装ヘリも着艦でき、格納できる装備を備える。
 そして無人偵察機による海上監視、およびデータ通信を不能にする設備まで。

 下準備は完璧だ。
 作戦が始まる。
 麻薬運搬船を改造した船舶技師を問い詰め、船名を突き止める。
 船の現在位置は無人偵察機がつかんでくる。
 そして急襲。水平線にかくれた船から武装ヘリが襲い掛かる。

 あるいは空輸されるコカインは空中で撃破。
 その役目は、弟をコカイン過剰摂取で亡くした空軍兵士がになう。

 麻薬運搬ルートの流れをたつために、ひとりの女子大生が狙われる。彼女の父は麻薬カルテルの重鎮だった。
 彼女のバッグにコカインを忍ばせ、それが入国時に発見される。彼女の無実を証明するために父親は販売ルートの有力者名を白状する。

 次は販売ルートの仲間割れを狙う。
 輸出されたコカインが途中で奪われる事件が多発。はじめは偶然だった。だが、供給ルートの到達率が50%を切る事態になる。
 なおのこと、奪われたコカインのコードをつけたコカインが別の場所で見つかるにおよんで、仲間同士の猜疑心が火を吹く。
 
 こうして、麻薬カルテルの裏切り、仲間割れから組織は空中分解していく。これが現実におこなわれたのなら、コカインルートは壊滅するだろう、とフォーサイスは自信をもって宣言している。
 だが、巻末、絶海の孤島に秘匿されたコカインをめぐって最後の裏切りが明かされる。皮肉な結末が人間の業をあぶりだす。
 

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