2013年6月6日木曜日

洛中洛外画狂伝が永徳の若き日々をあぶりだす

「洛中洛外画狂伝」
谷津矢車


単行本: 375ページ
出版社: 学研パブリッシング
言語 日本語
ISBN-10: 4054056385
ISBN-13: 978-4054056381
発売日: 2013/3/12


戦国末期の稀代の絵師・狩野永徳が、時の将軍・足利義輝や、松永久秀、織田信長らとの関わりの中で、どのように成長してきたかを描く一代記。
わしは、狩野を越える。
戦国末期の天才絵師・狩野永徳の狩野家の中での苦悩や、政治、戦争に翻弄されながらも強く生き抜く姿を描く。


 冒頭、信長の前にあらわれたのは、左右の柄が黒と白になった奇矯な着物を着た男だった。
 信長以上のうつけを標榜する男は、源四郎と名乗り、これまでのことを話し始める。


 狩野家。絵師として時代を築いてきた。だが、それも扇の絵を描くばかり。源四郎は飽き足りないものを感じていた。祖父の元信、父の栄松らが粉本と呼ばれる手本を残している。その手本をもとに描くのが今の狩野流だ。それの何がおもしろいのだ、と源四郎は思う。
 源四郎は自分独自の絵を描くのが好きだった。あるとき、自分とあまり年端のかわらないと思われる貴人と出会い、お前が描いた日輪の絵を見たいと乞われる。
 おりしも日食がおこり、源四郎は白い日輪から伸び上がる炎を描いた。背景は自分が見たとおりの真っ黒に塗りつぶして。その扇面を持って、貴人のもとを訪ね、気にいってもらうことができた。
 足利義輝との出会いだった。


 やがて、狩野家に同じ絵師の仲間である土佐家から廉(れん)という娘が行儀見習いとしてやって来る。廉はことあるごとに源四郎が絵を描くことを楽しんでいないと評する。たしかにそうだった。
 源四郎はあるとき父の名代で松永弾正久秀の連歌の会に出向く。そこで弾正に龍の絵が見たいと乞われる。


 義輝は一時都を追われていたが、三好氏や弾正の手引きで将軍として都に凱旋する。

 源四郎と廉は所帯をもつが、源四郎はなによりも誰よりも絵が好きだ、と告白する。廉も源四郎の絵が好きだ、といって絵師としての源四郎を見守っていく。
 
 日乗という陰陽師くずれの僧。松永弾正との交流。
 そして、義輝は己が支配するこの都を襖絵にせよ、と源四郎に命令を出す。祖父の死に際して、自分なりに描きつけていた都の絵図をもとに、源四郎は六曲二双の屏風絵を描くのだが・・・


 剣豪将軍・義輝が思い描く天下の平穏は、やがて破られていく。
 そうして信長との出会いがやってくる。
 不遜な絵描き風情がわしの天下に口を出すな、と信長は源四郎を脅すが、源四郎は気にしない。

 今まで、父を超え、祖父を超え、狩野を超えて来た。いままた、超えるべき信長を目の前にして、源四郎は自分が燃えているのを感じていた。
 

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