2013年7月26日金曜日

フェイスブックー子供じみた王国がもたらすもの

「フェイスブック —子どもじみた王国」
キャサリン・ロッシ (著)、
夏目 大 (翻訳)

単行本: 336ページ
出版社: 河出書房新社
ISBN-10: 4309206204
ISBN-13: 978-4309206202
発売日: 2013/5/24

私たちは本当に“ソーシャル"を必要としているのだろうか?
日本語版フェイスブックのリリースに携わり、
CEOマーク・ザッカーバーグのメール代筆を担当した女性社員がスキャンダラスに描く、
時代を象徴する会社の「内幕」と、勝利に取り憑かれた「王」の姿──。全米話題の書。
マークの代筆者という仕事には、私の情熱に訴えるものがあった。これほど奇妙な仕事、不思議な仕事はしたことがない。
フェイスブックの暗黒面に魅了された私にとって、マーク・ザッカーバーグの影になることは理想だった。(本文より)
マーク・ザッカーバーグのドグマとも言える「透明性」は、はたして本質的に「善」と言えるのか----。
自問自答の末に生まれた本書は、シリコンバレーの『マキアベリ的』ガイドブックとでも言うべきものになった。……『ザ・デイリー』
企業内部に入り込み、直接体験したものだけが知りえる事実が満載。
マーク・ザッカーバーグの早口の裏に隠された「真の意図」が明らかに。……『フォーブス』
内容(「BOOK」データベースより)
51番目の社員が見たソーシャルネットワークの真実。日本語版フェイスブックのリリースにたずさわり、CEOマーク・ザッカーバーグのメール代筆を担当した女性社員がスキャンダラスに暴く、時代を象徴する会社の「内幕」と、勝利に取り憑かれた「王」の姿―。全米話題の書。

 いまさら、の感があるフェイスブックの内幕。
 というのも、FBは、やはり日本ではあまり利用者が伸びないし、本国アメリカでも今や時代遅れといわれているみたい。
 そう言いながら、最近はフェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグさんが書いた本が話題を呼んだりして、目がはなせないというのも実感。

 この本では、開設されたばかりのフェイスブックに採用されたキャサリンが、社内の子供っぽいエンジニアたちを相手に孤軍奮闘していくさまが描かれる。
 そこはハッカーたちの集まりであり、女性差別、文系差別の王国。
 CEOのマーク・ザッカーバーグ自身でさえ、歓迎するのはプログラマやエンジニアばかり。キャサリンのようなカスタマーサポート担当など、彼のレーダーにはひっかからない。
 
 このあたり、月9で見たドラマみたいなシーン。
 社内を走り回るスケートボード。
 やたら騒いでにぎやかなエンジニアたち。
 遊んでいるのか、仕事をしているのかわからない社内。11時を過ぎても出勤して来ない社員たち。だが、夜遅くまでプログラムを書いている。
 そしてパーティー。プールつきのサマーハウス。伸び盛りの会社らしい雰囲気。

 フェイスブックも徐々に進化していく。社内で徹底してテストしていたニュースフィードが公開され、使い勝手もよくなる。だが「いいね」ボタンが出来るのはまだ先のようだ。
 マークの夢は世界中の人々をフェイスブックのユーザーにすること。それが世界を変えると信じている。いわば、彼なりの世界征服。

 初めての長期休暇をとったキャサリンはブラジルで休暇を過ごし、インターネットがない世界でも価値があることに、思いを新たにする。インターネットは世界を内包し、だれとでもいつでも逢える。だが、旅人たちは偶然出会い、分かれて行く。人間はみんな旅の途中なのだ。

 キャサリンはカスタマーサポートの新人採用担当となり、教育にも携わり始める。
 そして、プラットフォームの国際化を進めるためのエンジニアとして認められることになる。ようやく社内で人として扱われることになったのだ。
 だが、社内では異端と思われる、「人間の擁護者」としての姿勢はくずさない。

 フランス語版、スペイン語版に続き、日本語版の準備には東京まで来て1週間を過ごしている。
 そして、シェリル・サンドバーグが登場する。グーグルで営業、広告を担当した億万長者。シェリルはシリコンバレーでの女性の地位について関心があるようだ。フェイスブック社内のセクハラなどについて解決策を考え出してくれたりする。

 そしてその年の暮れ、キャサリンはマークの代筆者に選ばれることになる。メールの返信を書いたり、フェイスブックページのマークの原稿を書いたりする役目だ。「プログラミングもできない文系の女がフェイスブックの絶対権力者になりすます」というわけだ。

 しかし、すべてをオープンに、すべてをデジタル化しようとする、フェイスブックやシリコンバレーの動きについて懐疑的な視点を持つようになったキャサリンは、持ち株を売却して会社を辞めることになる。

 最後にハプニングが起こり、全てを記録しようとする現代テクノロジーの限界について言及している。記録出来ないこと、共有出来ないことは必ずある。「この手の届かなさこそが人生の本質」と結んでいる。

 

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