2010年10月19日火曜日

年の瀬を控えて、江戸の町があわただしく

「今朝の春」 みをつくし料理帖
高田 郁


文庫: 290ページ
出版社: 角川春樹事務所
ISBN-10: 4758435022
ISBN-13: 978-4758435024
発売日: 2010/09/15


大阪の洪水で孤児となった「澪」が天満の料理屋吉兆庵で修業し、成長して江戸に出、つる屋の女板前となって活躍する短編シリーズの第4巻。
今回は神無月から年越しまでの短い期間に起こった事件を描く4篇。

『花嫁御寮』ー
ははきぎ飯
ははきぎとは帚木、いわゆる「とんぶりの実」ですな。
謎の侍・小松原の母親らしい人が現れ、腎の病に効くという、ほうき草の実の話題が続く。
加えて澪と同名の大商人の娘・美緒に大奥奉公にまつわる包丁修行の話が持ち上がり・・・


『友待つ雪』ー里の白雪(かぶら蒸し)
 吉原のあさひ太夫、実は澪の幼なじみの野江。その太夫を題材にして戯作を書くという清右衛門。
彼の調査により、幼い頃に別れてからの野江のその後が少しづつ明かされてくる。
だが、親友の過去を暴かれるのを恐れる澪は、ひとつの賭けをして・・・
『寒紅』ーひょっとこ温寿司
寿司は温めるもんじゃねえ、という江戸っ子。
つる屋でまかない仕事を勤めるおりょうの旦那・伊左三に、新宿の仕事にかこつけて浮気をしているのではないか、という噂がたつ。
なにやらそれらしい女が店のまわりをうろついて、つる屋の人々の騒動が始まる。
しかし伊左三の真意は・・・親子の情愛が涙をさそう感動篇。


『今朝の春』ー寒鰆の昆布締め
 江戸城の毒味役になにやら騒ぎがあったらしい。小松原がそれに関連しているのではないか、と澪は気をもむ。
しかし、登龍楼との鰆を使っての料理対決の話が持ち上がり・・・などというと、まるで「美味しんぼ」みたい。
年の瀬と新年、立春を控えた江戸の町が、料理対決で盛り上がる。

料理を通して人々と関わっていく澪が、料理を通じて成長して行く好評シリーズ。今回も快調。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

爺の読書録