2010年10月16日土曜日

やはりシミタツ、風が心地よい

「引かれ者でござい」―蓬莱屋帳外控―
志水辰夫

単行本: 286ページ
出版社: 新潮社
ISBN-10: 4103986069
ISBN-13: 978-4103986065
発売日: 2010/08/20

蓬莱屋の通し飛脚たちが活躍するシリーズ第2作。
今回も熱い
3篇の物語
「引かれ者でござい」
甲斐、本栖湖から田子の浦へ逃れる旅。
主人公の勝吉は前作「彼岸の旅」に引き続いての登場。
今回は江戸の大店から依頼され、そこの放蕩息子の現状を見定める役目を担った。尊王玄武党と称する組織に参加するのだという。同時にその資金として三百両の金を用意しろと言われている。まるでオレオレ詐欺みたいな話。
結局、金は払わずに、放蕩息子を尊王玄武党から引き離すことになった。ならば親元に連れ戻すという役目に様変わりしてしまう。下部から駿河まで富士
川を下るのだが、勤皇党の仲間が追ってくる
放蕩息子の明るさが救いとなるロードムービー。

「旅は道連れ」
越後から会津へ抜ける山越え道。
シリーズではおなじみの宇三郎は江戸への道を急いでいたが、大雨が行く手を阻む。ここを超えれば会津に出られるというのに、阿賀川が増水で渡れない。
土地の樵が助けてくれる。野猿の綱の付け替えを手伝えば帰り道が近くなるというのだ。それを手助けしようという、やからが五人も現れる。なにやらうさんくさい面子が、きな臭いにおいを漂わせて波乱を予感させる。
そしてまた、谷を渡ったところであらたな難儀が。いわくありげな武家の娘主従三人が旅に加わった。主従をねらう怪しげな浪人たちもうろつき始める。
九人という大所帯の道連れになった旅人たちは、それぞれの思惑を秘めて分かれ道へ・・・

「観音街道」
上総。
5年前に蓬莱屋をやめて突然姿を消した弟分の次郎吉を尋ねて、治助は上総の山をさまよう。家の事情で実家を告いだ次郎吉は炭焼きの仕事を余儀なくされ、山 ごもりの日々を送っていた。治助は治助で蓬莱屋の事情から次郎吉の復帰をねらっている。だが、次郎吉の村には掛川藩の御用商人から厳しい締め付けがあるよ うで・・・.
藩の犠牲となった樵の美しい未亡人や、抜け荷をたくらむたくましい農民たちも入り混じって治助を翻弄する。
ついに立ち上がった次郎吉たちを、見守る治助が考え出した手助けとは・・・

 

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