2010年10月9日土曜日

時代はハードボイルド。ん、違うか?

「つばくろ越え」


単行本: 340ページ
出版社: 新潮社 (2009/8/22)
ISBN-10: 4103986050
ISBN-13: 978-4103986058
発売日: 2009/8/22

シミタツが時代小説を書いた、ということで、ひところ話題になった。それが、若者が主人公だということで、少し敬遠していた。
ハードボイルドの雄がいまさら、という思いもあった。
昨年に出た「つばくろ越え」に続き、今年出版された「引かれ者でござい」がまたまた人気を呼んでいる。今回はおとなの男が主人公。
ということで、あわてて2作を立て続けに読む。実は、間に湊さんの新作をはさんでだけど。

さて、「蓬莱屋帳外控」シリーズという今回の作品、主人公は通し飛脚という、荷物を持ち、現金は腰に巻き付けて、ひとりきりで走り抜くという、スピードと責任を要求される職業。当然、ワケありのカネ、荷物、手紙を運ぶことになる。そして、それを阻もうとする敵も。こうなってくるとシミタツ節、全開だ。

「つばくろ越え」
会津。
仙造がふたたびその峠を訪れたのは、先輩の飛脚が襲われて隠した五百両の小判を取り戻すため。そこで出会ったのが巳之吉という孤児。歳は八つだというが、 乞食をしながら諸国をさまよっていたので、年もそう言えと言われていた。こいつを鍛えて自分の手下にしよう、いや人間として立ち行くように育ててやろう。 そう思いながら江戸へ連れていくのだが・・・

「出直し街道」
越前。
何年か働いたすえにようやくカネができたという男から、郷里の妻を迎えに行ってくれとの依頼を受けた宇三郎が任務につく。妻を亡くし、その連れ子とも別れることになった宇三郎には辛い仕事だった。しかし迎えに行った妻にはすでに新しい夫ともいえる男がいて・・・

「長い道草」
越後。
仙造が請け負ったのは薬草を医者のもとに届ける役目だった。仲の良い医者夫婦だったが、なにか影がある。追っ手がつきまとうのだ。それにもかかわらず、のんびり湯につかったりして大丈夫かいな。いわくありげな行いの訳は・・・

「彼岸の旅」
陸奥。
蓬萊屋の主人、勝五郎が子飼いにしていた半助が故郷に帰ると言って身を隠した。大病を患っていたらしい。死出の旅路なのか。手代の鶴吉を伴って追跡するのだが、半助の跡を追う旅は半助の過去を洗い出す旅でもあった・・・

いやあ、ハードボイルドですなあ。文体が時代小説を乗り越えている。
久方ぶりのシミタツ節を堪能。

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