2011年8月7日日曜日

六本木のビルをビルジャックした犯人たちの目的は

「タワーリング」
福田 和代

単行本: 249ページ
出版社: 新潮社
ISBN-10: 4103294612
ISBN-13: 978-4103294610
発売日: 2011/04/22

 東京の巨大ビル・ウインドシア六本木がハイジャックならぬビルジャックされる。
 人質にされたのはこのビルのテナントに勤務するすべての社員、そしてビルに住まう人々、なおかつビルのオーナーであり都市開発企業マーズ・コーポレーションの社長・川村章吾。
 犯人たちはエレベーターをは停止、すべての通路を遮断し、逃走用のヘリコプターと現金5億円を要求して立て籠った。

 と、構想は壮大だが、いかんせん、少し小粒にまとまってしまった。
 犯人たちに対決するのは、ウインドシアを建設したマーズ・コーポの社員たち。とくに川村社長の幼なじみで献身的に社長に尽くす副社長・中沢。そしてまだ若輩ながら、中沢からは目をかけられている課長の船津。ビルの構成を知り尽くしている社員たちはビルジャック犯に立ち向かい、その裏をかいてSITの突撃に協力していくのだが。

 犯人像が鮮やか。元マーズの社員で社長にうらみを抱く男、余命いくばくもなく都市開発に復讐心を持つ中年、自分の過去をふっきれないオタク崩れ、そんな男たちを束ねる主犯格の少女。だが、ボスはもうひとりいるようなのだ。

 犯人たちの裏をかき、お掃除ロボットを使って警官たちとの接触をはかる船津。犯人たちは意外な手段で脱出の道を開こうとする・・・。

 3月の「ハイ・アラート」では、ちょっと厳しい評価を下してしまったが、今回もせっかくの設定を活かしきれていないというか、もっと発展する余地もあったのに、中編程度に短く収まってしまった。やはり、話題作「迎撃せよ」に期待するか。

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