2011年8月24日水曜日

チャンバラ版『俺たちに明日はない」ーなのかな


ARAKURE あらくれ」
矢作 俊彦・司城 志朗 

単行本: 282ページ
出版社: 早川書房
言語 日本語
ISBN-10: 4152092173
ISBN-13: 978-4152092175
発売日: 2011/6/23

 百姓の子ながら、負けず嫌いで自己流の剣術の腕をみがいていた亮介は、名主の困った事態を救う。だが、そのせいで煙たがられ、故郷を逃げ出すはめに陥る。
 生まれ故郷を追われた亮介は無宿渡世人となり関東をさまよっていたが、ある宿場の賭場で、同じく無宿人の欣蔵と出会う。
 賭場でのもめごとを納めたことで欣蔵は、年下ではあるが亮介の子分として従うことになった。

 物語の始まりは、またまた「横浜」。
 前回山崎さんのレビューでは横浜は明治期の活気あふれる街になっていたが、今回の横浜は異人たちの居留地が出来始めたころの、まだまだ神奈川宿の一寒村でしかない。
 矢作、司城コンビの時代劇。と書いて、調べてみると、何作か明治時代の冒険活劇があるようで、あわてて、コンビ初の、と書いていたのを削除。今回は幕末のロード・ムービー。

 賭場で賭け金のかたとしてもらいうけた割符をもって横浜港へ荷物を受け取りに行くと、「それはわしの荷物じゃきに」と土佐弁の男が邪魔をする。中身はピストルとライフルだった。この男、才谷梅太郎という宛名の主は自分だと主張するのだが、人には坂本さんと呼ばれていたようだ。怪しい。
 ピストル2丁とライフルを自分のものにした亮介と欣蔵、ここからふたりの賭場荒らしというギャング生活が始まるのだ。

 そこに講談師があらわれ、二人のあらくれぶりを講談に仕立てて人気を博する。ふたりにとっても、悪党だ、義賊だ、残虐な人殺しだ、と勝手なうわさが先行することを避けることにもなった。
 坂本龍馬の所属する小千葉道場には、村の幼なじみの良吉とその妹も顔を出していた。妹の舞とは浅からぬ因縁がある。
 ある宿場では京へむかう近藤勇との出会いがあった。いつか京へくれば侍にしてやる、との言葉が亮介の心に火をつける。

 幕末オールスターキャストだね。
 なおかつ会津藩の大名行列をそれと知らずに襲い、大金を手にしてからは、幕末の歴史に流されていく悲劇が語られていく。
 悲劇だけれど、喜劇。昔の東映明朗時代劇、日活の無国籍ギャング映画のノリで楽しめる。ある映画監督の評では、べたぼめだった。映像化される日がくるかもしれない。

 「明日に向かって走れ」「俺たちに明日はない」を日本の幕末に舞台を移して、かっこ悪い男たちのかっこ悪い生き様を描く、時代劇ハードボイルド。
 

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