2011年8月9日火曜日

キングに敵対するクイーン、さてその顛末は


「キング&クイーン」
広司

単行本: 298ページ
出版社: 講談社 (2010/5/26)
言語 日本語
ISBN-10: 4062162237
ISBN-13: 978-4062162234
発売日: 2010/5/26


 元SP、冬木安奈。いまは六本木のバーでホステス兼、セクハラ酒飲み男の追い出し係みたいなことをやっている。
 彼女のもとに警護の依頼が届く、というより押し付けられる。依頼者はレンちゃんこと宋蓮花。警護されるのはアンディ・ウォーカーというチェスの世界チャンピオン。彼はある事から米大統領の怒りを買い、国家反逆罪で手配されているという。
 そんなアンディを誰かが狙っているというのか。

 一昨年、短編連作「ジョーカー・ゲーム」「ダブル・ジョーカー」で話題をさらった著者の、趣向を変えた長編。文体は短編向きかと思えるが、設定はなかなか入り組んでいる。
 チェスのチャンピオンという人種の一風変わった生態、その精神的ひずみがもたらす変人ぶりとトラブルがあらわにされていく。

 安奈は元SPの素養を活かしてアンディを匿っていくが、アンディの場当たり的な対応とレンちゃんの非協力な態度で、保護されるべき対象がみずから隠れ家を抜け出したりしてしまう。
 現在の逃避行とアンディの少年時代、チャンピオンとなっていく過程が並行して描かれていくが、途中、あれ、と思う回想が出てくる。9・11の悲劇がもたらす影が覆うもの。それは・・・

 やはりチェスの奥深さ、チェスチャンピオンなる人物の不可解さが物語のメーンだろうか。チェスの指し手と公安関係の思考経路がなにやらだぶってくるというのも、著者の筆の冴だ。究極の頭脳戦、と帯にあるが、なるほどそうかも。

 ジョーカー・シリーズはある意味、裏切られる楽しみがあったが、今回は素直にストーリーに詰め寄られたかっこう。こころよいチェックを楽しもう。
 

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