2011年8月29日月曜日

そして新しい龍馬がよみがえる

「龍馬奔る 少年篇」
山本 一力

単行本: 267ページ
出版社: 角川春樹事務所
ISBN-10: 4758411743
ISBN-13: 978-4758411745
発売日: 2011/07/08
 天保6年11月15日。土佐の高知城下でひとりの男の子が産声をあげた。誕生の日の朝に、父親は金色の駒の夢を、母親は火を吹く龍の夢をほぼ同時にみたという。産まれた子供は毛深く、背中の産毛が特に濃かった。男の子は龍馬と名付けられた。
 坂本家の外戚にあたる才谷屋は土佐藩勘定御用も勤める両替商であり、藩の侍たちには質屋として重宝がられている。
 当主の五代目八郎右衛門は龍馬の誕生を盛大に祝い、半里四方の村々に触れて回り、餅撒きをおこなう。


 その才谷屋の庇護の元、姉の乙女にも可愛がられ、龍馬は通常より背の高い、たくましい少年として育っていく。
 そして、満一歳になったときには河田小龍が家庭教師として読み書きを教えることになった。
 四歳になった6月、龍馬は高知城の石垣登りに挑んで成功し、苦手だったアオダイショウも同時に克服する。

 その2ヶ月前の天保9年4月13日、柏木村の大庄屋、中岡家に待望の男子が産まれた。福太郎と名付けられたその子は三人の姉に守られて、聡明な少年に育っていく。
 3歳で光次、7歳で慎太郎と名を改めたころ、龍馬との出会いがある。


 さて、土佐出身の山本さん。ジョン万次郎が始まったばかりだというのに、今度は龍馬と中岡慎太郎だ。
 土佐の風物、名産、食い物、酒は当然司牡丹を散りばめ、若き日の龍馬と慎太郎の成長を丁寧に描いている。
 そこで龍馬は瓜を握りつぶすことで握力を鍛え、石垣登りで度胸をつけ、室戸岬のクジラ漁師のもとで根性を鍛えることになる。
 中岡慎太郎は料理番の子・跳太を遊び相手に、川で泳ぎを覚え、肝試しの滝壺飛び込みで度胸のあるところを知らしめる。それは同時に人の上に立つ資質を際立たせるものでもあった。


 そして、成長する者と対比するように親しい人たちも亡くなっていく。才谷屋五代目の葬儀にはクジラ漁師たちが華やかな幟をたてて参列する。そして、巻末、母重篤の知らせを聞いた龍馬は、室戸から漁師の勢子舟に乗って高知城下へ急行することになる。


 いやあ、新しい龍馬像に感嘆する。
 さて、いつまで付き合えるのか。
 

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