2011年8月21日日曜日

唐人お吉が明治の横濱で活躍する


「横濱 唐人お吉異聞」
山崎 洋子

単行本: 226ページ
出版社: 講談社
言語 日本語
ISBN-10: 4062167530
ISBN-13: 978-4062167536
発売日: 2011/1/28

 明治12年、横浜。
 絵双紙屋で働く20歳の瑠璃をめぐる物語。
 母は紀代といい髪結の腕は一流だが、時代の流れについていけないところもある。なにせ明治もハイカラな西洋風になっていこうという頃合いだ。父は増吉というが、実の父ではなく、何事につけ事態をリードする紀代に頭があがらない。
 実は瑠璃には、親に捨てられたという記憶がある。目覚めると馬小屋で寝ていた時の、旅芝居の白粉の匂いにまみれていた時の記憶が鮮明に残っているのだ。

 ミステリーからスタートした山崎さんだが、ファンタジー色の強い作品から、今回のような人情味劇までポジションは幅広い。

 友だちの奈加と遊びに行った夜店で、らしゃめんと外人に因縁をつけられたところをお吉という気っぷの良い女に救われる。
 お吉とは何者?
 幕末の下田で時のアメリカ総領事ハリスの囲いものとなった、有名な唐人お吉なのか。周囲の人たちはお吉の顔見知りであり、何年ぶりかの再会を喜んでいるようだ。ただ、紀代だけは関わりを避けている。ともに髪結を生業とするのだが。二人の間に何があるのか。
 
 明治が明治となっていく横濱、あえて旧字で書かれたタイトルが意味深。
 お茶場という、輸出用の茶の加工場で働く女たち。居留地で外人に雇われる男たち。当の紀代にしても西洋風の髪型を自分の技術に取り入れることに抵抗を感じたりもしている。お吉の方は破天荒な生き方そのままに新しさを自分の売り物にする。写真術の進展なども大きな比重を占め、主人公のこれからにも大きく影響を与える。

 さて、瑠璃は前から気に掛けていたイケメンの元次が悪漢に襲われて重傷を負い、その看病の中で、二人の仲が急速に接近する。
 その時、お吉が明かす真実。そして紀代が明かす真実。
 
 明治初期の横浜を舞台になぞの女がもたらした家族再生の物語。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿

爺の読書録