2009年12月18日金曜日

「製鉄天使」


「製鉄天使」
桜庭 一樹
単行本: 336ページ
出版社: 東京創元社 (2009/10/29)
 名作「赤朽葉家の伝説」から生まれたスピンオフ作品。とはいっても、実は赤朽葉家の中で主人公の一人が描いた美少女暴走族のコミックをノベライズしたもの。早い話が少女マンガの原作。
 こういう本を読んでいると、人間、馬鹿になります。というひともいるだろうし、そういう評価をしたがる人の気持ちも分かる。
 ただ、本読みの気持ちからいえば、何時間、何日にもわたって付き合ってきた本を、軽すぎる、サブカルチャーだと否定するのはいやだ。
 それにこの興奮度はどうだ。鳥取の美少女中学生ながら実は暴走族。鉄をあやつり、バイクが生き物のように自分にまとわりつき、族の仲間から畏怖され、これまたチームの美少女マスコットにも慕われている主人公。血だらけになりながら、地元の鳥取を傘下におさめ、島根の女暴走族をコテンパンにし、岡山そして山口からの山越えの帰還には、鉄の血に加え、山の者の血をも呼び覚まして、仲間の少女たちを無事に郷里に導くことが出来る。
 そして13歳から始まった物語は19歳には迎えねばならない終末に向けて、不吉な通奏低音をかなでつつクライマックスへ。
 まず、族のマスコット美少女の不幸な失墜。いや応なく大人への階梯を昇らざることを自覚して、新たな飛躍を試みる主人公に途方もない課題が与えられる。
 その結末は、、、、
 これでいいのか、といわれれば、これでよいのだ。鉄の血だ。山の民の血だ。これでよいのだ。

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